海水温上昇 サンゴ礁保全待ったなし


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 猛暑をもたらしている太平洋高気圧の影響で沖縄近海の海面水温が上昇し、サンゴの白化現象が大規模に発生する懸念が出ている。

 気象庁によると、沖縄周辺の広い海域で、海面水温が外洋ではこれ以上温かくならないとされる31度以上になった。沖縄南海上の8月上旬の平均海面水温は30・3度まで上昇し、世界的に大規模な白化が起きた1998年と同程度となった。
 “海の熱帯林”と呼ばれるサンゴ礁は生物多様性の宝庫であり、生態系に悪影響を与えかねない深刻な事態と受け止めたい。県内各海域のサンゴ礁に異変やその兆候は出ていないか。行政や研究機関、ダイバーや漁業関係者らは連携し、情報収集に努めると同時に監視態勢を強めてほしい。
 サンゴの白化は、サンゴと共生し栄養分を与えている植物プランクトンの褐虫藻が抜け出すことで起きる。この状態がしばらく続くと、サンゴは死滅してしまう。
 県内の研究者によると、98年の大規模な白化現象は、イノー(礁池)から深場の海まで広い範囲で観察された。15年たってようやく、元の状態に戻った場所も増えてきたという。
 サンゴ礁は海洋面積の1%にも満たないが、海の生物の約4分の1が生息する海のオアシスだ。さまざまな魚が産卵し、稚魚が育つ場所であり、人間にとっては好漁場としての機能を有する。
 そのほかにも、波浪から海岸を守るリーフの防災機能、美しい景観を生み出す観光資源など多様な機能を併せ持つ。白化が続いてサンゴ礁が失われれば、漁業や観光への影響も計り知れない。
 サンゴの白化は、地球温暖化による海水温上昇が原因だが、県内では陸地から流れ出した赤土など人為的な影響やオニヒトデ被害が追い打ちを掛ける。特に赤土汚染はサンゴ礁生物のストレスになるほか、積もった赤土がサンゴの幼生の定着を妨げる。国立環境研究所と琉球大はことし4月、赤土が流れる河口付近で白化したサンゴ礁の回復力が低下していると発表した。
 ただでさえ、県内では本土復帰以降の大規模な開発や埋め立てで広大なサンゴ礁域が失われていることを忘れてはならない。残されたサンゴ礁は沖縄だけでなく人類の財産でもある。温暖化対策とともに、赤土流出防止の徹底をはじめサンゴ礁の保全に総力を挙げたい。