「みなし控除」拡大 非婚世帯支える法改正を


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 法律上の結婚を一度もせずに子どもをもうけた非婚の母子(父子)を社会全体でどう支えるか。古くて新しい問題である。

 所得税法が定める「寡婦控除」を、ひとり親世帯にも適用する「みなし控除」などの措置を導入し、公営住宅家賃や保育料を低くするなどの対応を取っている県内市町村が増えている。
 公営住宅家賃で「みなし控除」対象としているのは5市町村、保育園の保育料は19市町村に上った。市町村独自の判断で、結婚歴のない世帯への支援を広げていることは望ましい動きだ。さらなる拡大を期待したい。
 ただ、みなし控除は本人が申し出なければ、適用されない。家賃や保育料は家計での支出割合が高いだけに、必要としている非婚の親に十分な情報が伝わるよう、万全な周知を図ってもらいたい。
 「寡婦控除」は、戦争で夫を亡くし子を抱えて苦労する妻を助けるため、1951年に創設された。所得税法などは「寡婦」を夫や妻と死別、または離婚した後に再婚していない人などと定める。
 古い家族観と結婚観が色濃くにじみ、結婚せずに子どもを産み育てるシングルマザーらが支援の対象から外されている。
 それは、結婚歴のある親よりも高い税や保育料の負担を強いることを意味する。社会の宝である子どもは平等であるべきだ。差別的な取り扱いを受け続ける不条理をなくすため、根本的改善に向けたうねりを高めねばならない。
 所得税法は、寡婦に対し所得から27万円~35万円の控除を認め、その分税金が安くなる。所得を基準に算定する住民税や国民健康保険料、保育料、公営住宅家賃などにも反映される。現行制度では、非婚のひとり親は逆に高くなる。
 貧困層が多い母子家庭の中でも、未婚者は困窮の度が高い。国の調査によると、平均収入は死別が256万円、離婚が176万円だが、未婚は160万円と低い。県の08年のひとり親世帯調査でも、母子家庭の平均月収は10万円未満が40%を占めた。
 未婚の人が寡婦控除制度から除外される正当な理由はない。日弁連は「合理性のない差別」として、警鐘を鳴らし、国や自治体に改善を求めている。提唱を支持する。
 結婚観が多様化する中、「寡婦控除」自体が、時代にそぐわない制度と化している。「寡婦」の定義に非婚を含める法改正が急務だ。