待機児童対策 保育の不平等解消を急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 保育園に入りたくても満杯のため入れない待機児童対策として、県内市町村は既存保育施設の増改築による定員増や認可外保育園の認可化などを進め、4年間で受け入れ枠を約5千人に拡大した。だが待機児童数は2305人(2012年)と全国でも依然高水準だ。

 受け皿を拡充しても待機児童が解消しない理由として、関係者は入所をあきらめていた潜在的待機児童の掘り起こしが進んだと指摘する。県や市町村、保育園など関係機関は潜在的待機児童の正確な実態把握を急ぐべきだ。同時に仕事と育児の両立を望む子育て世代への支援を拡充、加速してほしい。
 県内市町村は、09年から県の二つの基金を活用し、待機児童対策に取り組んできた。「安心こども基金」は、老朽化した認可保育園に対する増改築費用助成(75%)など保育所整備や、保育士確保、ひとり親家庭の支援などメニューが多様だ。「待機児童対策特別事業基金」は、認可化を目指す認可外保育施設を対象に施設改善費や運営費を助成。両基金を活用して施設と定員の拡充につなげた関係者の努力は評価できる。
 一方で、ハード面の拡充だけでは解消しない待機児童対策の現実も直視すべきだ。県内の保育現場は保育士不足や非正規採用の保育士の多さなど課題も多い。行政の助成措置は保育士拡充や保育の質向上にももっと向けられるべきだ。ハード、ソフト両面で保育環境が改善されなければ、保護者も安心してわが子を託せまい。
 沖縄の保育問題に詳しい神里博武・元沖縄国際大教授は、待機児童の7割が3歳未満児である県内の特徴に着目し、(1)3歳未満児を対象にした小規模保育所の施設整備(2)在宅で保育する保育ママの育成と活用(3)5~6人の子どもをファミリーサポートで保育するファミリーホームの整備-などを提起する。傾聴に値する指摘だ。
 県内各市町村も、株式会社の新規参入を奨励して「待機児童ゼロ」を達成した横浜市など、県内外の事例、専門家の提言を吟味しながら、地域実情に合った多様なサービスを確立してほしい。
 市町村長の子育て支援への強い指導力と住民合意の下で、保育をめぐる不平等を一刻も早く解消すべきだ。次代を担う子どもの健やかな成長が保障されてこそ、地域社会の明るい未来も開けてくる。