沖縄予算増額 「アメとムチ」を断ち切れ


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 永田町・霞が関の政治家や閣僚の間で、沖縄振興予算の増額が、基地問題の懸案を前進させる取引材料に位置付けられるようになって久しい。47都道府県の予算をめぐって、政府がここまで「政治的配慮」を前面に振りかざす例は、沖縄以外にあるまい。

 内閣府は2014年度の沖縄振興予算の概算要求で、本年度の3001億円から最大500億円積み増す方針を固めた。
 増額方針の裏には、米軍普天間飛行場の返還・移設問題をめぐり、安倍晋三首相が推進する名護市辺野古への県内移設を認めず、県外移設を訴える仲井真弘多知事を取り込む思惑があることは明らかだ。
 概算要求額を増やすことは歓迎するが、沖縄予算の拡充が常に基地問題をめぐるバーターの意味合いで語られることは理不尽だ。
 こうした旧態依然とした「アメとムチ」の発想を断ち切り、本来交わされるべき沖縄予算の本質論を深めるべきではないか。
 500億円の内訳は、仲井真知事が求める那覇空港第2滑走路整備に300~400億円、沖縄科学技術大学院大学関連予算が最大200億円と見込まれている。
 これは沖縄に措置されるべき正当な予算として、県が求めているものだ。那覇空港の第2滑走路について、仲井真知事は振興予算とは切り離し、日本全体の基幹空港整備の一環としての予算措置を求めているが、妥当な要求だ。
 県幹部が「普天間移設とは別問題」と突き放しているが、その通りである。
 広大な米軍基地を抱えているがゆえに、沖縄に基地を押し込めておきたい政治家や官僚らは、沖縄が国の補助金を最も多く得ているという印象を振りまいている。
 だが、その認識は誤りだ。池宮城秀正明治大教授によると、人口1人当たりの国からの依存財源額は、沖縄が31・5万円で全国18位だ。財政力指数が沖縄と近い九つの類似県の平均は41・2万円であり、それと比較しても、沖縄の国依存の度合いがかなり低いことは明白だ。
 全首長が反対するなど、辺野古移設にあらがう沖縄の民意は根強い。県外移設を主張する仲井真知事を懐柔する材料に振興予算をあてがう政府の発想は、沖縄の民意と相いれないばかりか、財政の在り方、国と地方の関係をゆがめる愚を重ねることになろう。