見舞金5年未払い 実効性のある仕組みを


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 2006年に沖縄市で発生したタクシー強盗致傷事件で実刑判決を受けた海兵隊員2人が、民事訴訟で支払いを命じられた損害賠償約2800万円を5年近くたっても払っていない。米国政府が見舞い金として被害者に支払うべきだが、理由も示さず応じないままだ。米側との間に立つ防衛省も被害者から2度も請求を受けているにもかかわらず、何の説明もしてこなかった。こんな理不尽なことが放置されたままでいいのか。

 在日米軍関係者の公務外の事件、事故の補償金について、被害者が防衛省に請求した場合、日米地位協定第18条6項bで「合衆国の当局は、遅滞なく、慰謝料の支払いを申し出るかどうかを決定」するとある。また1996年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告時の地位協定運用改善では、米政府が肩代わりした賠償額と訴訟の賠償額に差額があれば日本政府が支払うことも合意している。「遅滞なく」支払うべき補償金が実際には5年近くも支払われていない。日米両政府が取り決めを順守しなければ被害者が泣き寝入りするほかない。これでは協定も運用改善も絵に描いた餅だ。
 沖縄防衛局は琉球新報に「機会あるごとに本省を通じ、早期に支払うよう督促しているが、米側は現在審査中とのことだ」と回答してきた。なぜ審査に5年近くもかかるのか。理解に苦しむ。
 被害者のタクシー運転手の男性は沖縄市内で乗せた米兵2人に突然、首を絞められて助手席に引き倒されるなどの暴行を受け、現金を奪われた。男性は頸椎(けいつい)捻挫後遺症と心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負っている。男性は事件から7年たった現在も後遺症に苦しみ、復職できていない。さらに介護に当たっている妻も精神的苦痛を受けているという。被害者側は今でも事件の被害に苦しみ続けている。米政府はどう受け止めるのか。
 被害者は今月14日、防衛局に早期支払いを求める通知書を送った。未払いが続く場合は日米両政府を相手に提訴する考えだ。裁判で勝ち取った賠償請求権を再び裁判で争わないといけない日本のありようは法治国家と言えるだろうか。日米両政府は被害者に補償金を即座に支払うべきだ。現在の取り決めが機能していない以上、実効性のある仕組みに改める必要もあろう。