汚染水外洋流出 政府の責任で処理急げ


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 これは人災ではないか。福島第1原発の地上タンクから高濃度汚染水が300トンも漏れ、外洋に流れ出た可能性が高い。

 タンクからの漏えいは5回目で、過去最大。漏えい箇所は依然不明。漏えいは止まっていない。
 東京電力任せにした政府の責任は重い。安倍晋三首相は「国としてしっかり対策を講じる」と発言したが、具体策は見えない。直ちに政府主導で汚染水処理体制を確立すべきだ。
 今回発生した新たな事故は、国際的な事故評価尺度(INES)に当てはめると、8段階の下から4番目のレベル3(重大な異常事象)に相当するという。1997年に発生した東海再処理施設の火災爆発事故に匹敵する。
 汚染水漏れを起こしたタンクは鋼鉄製の部材をボルトでつなぎ合わせる構造だ。溶接より工期は短いが耐用年数は5年ほどしかない。一連の汚染水漏れはこのタイプで発生している。
 廃炉作業が長期にわたるにもかかわらず、見通しの甘さから敷地内に同タイプのタンクを約350基造り、漏れ出すリスクを抱えることになってしまった。22日も同タイプ2基から新たに漏れた可能性があるという。
 タンクから漏れ出した場合を想定して水を食い止める堰(せき)を設けていたが、排水弁を全て開けていたため用をなさず、汚染水が流れ出た可能性が高い。ずさんとしか言いようがない。溶接タイプか別の方法への切り替えが急がれる。
 原発事故後、地上タンクとは別に敷地内から毎日300トンの汚染水が海に流出し、環境を汚染し続けている。事故後約2年間に海に流出したストロンチウムなどの放射性物質は30兆ベクレルに達し、保安規定に定められた年間放出基準値の約100倍に相当する。
 外洋に汚染水が流れた可能性が高くなったため、福島県沖の漁業は9月から中断に追い込まれる。これ以上汚染が拡大すれば、国際社会から日本が深刻な環境汚染を放置していると見なされ、非難されても言い逃れできないだろう。
 信頼が失墜した東電には処理を任せられない。汚染水処理と監視体制を確立するために、新たな枠組みを構築するよう政府に求めたい。国際原子力機関(IAEA)や国内外の研究機関の支援も仰ぎ、一刻も早く危機を脱しなければならない。