温暖化報告書 地球の訴えに耳傾けよう


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 衝撃的な予測だ。今世紀末の地球の平均海面水位は最近20年間と比べて最大で81センチ上がり、平均気温は最大4・8度上昇する-。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第5次報告書最新案で明らかになった近未来の地球の姿だ。
 海面上昇で水没の危機にある南太平洋の島々の住民だけの問題ではない。温暖化が予測通りに進むと、環境や食糧などさまざまな分野で影響は深刻だ。人類全体で考え行動しなければならない時期に来ている。
 報告書案は、人間の活動が原因で地球温暖化が起きている可能性は「極めて高い」(95%以上の確率)と、これまで以上に踏み込んだ表現で警告を発している。
 二酸化炭素(CO2)の排出削減が急務の課題であることを示す内容で、今後の世界の温暖化対策の基礎資料となり、国際交渉でも基軸となるのは間違いない。
 CO2などの温室効果ガスについて、日本を含む15の先進国と欧州連合(EU)は2020年までの自主的な削減目標を掲げることに国際合意している。日本は民主党政権時代に「1990年比25%削減」を掲げたが、東京電力福島第1原発事故を受けて政府は方針の見直しを国内外に表明した。削減目標は実質、白紙状態だ。
 ただ、地球温暖化をめぐってはIPCCの評価に懐疑的な見解があるのも事実だ。温暖化の主因をCO2とする説には異論も多く、地球はむしろ寒冷期に向かっているという研究さえある。
 温暖化防止の議論は原発容認論に結びつく危うさも孕(はら)んでいる。原発はCO2を排出しないクリーンエネルギーだとして、温暖化防止策として有効という論法だ。
 日本は福島第1原発事故後、CO2削減の国際公約を後退させ、いまや原発回帰、原発輸出の道を歩んでいる。温暖化防止を逆手に取って原発政策を推進するとしたら、容認できるものではない。
 政府は風力や太陽光など自然エネルギーの分野にこそ力を注ぎ、その上でCO2削減の目標を設定し国際的な責任と役割を果たすべきだ。
 猛暑、ゲリラ豪雨、サンゴの白化現象…。国内だけでなく世界中の多くの人が、地球の異変を感じているはずだ。地球が何を訴え、何を求めているのか。われわれも想像力を働かせながら、いま何ができるかを考えたい。