集団的自衛権新法 平和憲法を葬る気なのか


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「衣の裾から鎧(よろい)が見える」とは、こういうことを言うのだろう。

 日本国憲法で平和主義を掲げるこの国は、危険な方向へ急速にかじを切りつつある。
 安倍政権と自民党内で、憲法解釈で禁じられてきた集団的自衛権の行使容認を想定した新法「集団的自衛事態法」(仮称)の整備が検討されている。
 自衛隊が集団的自衛権を行使する際、文民統制の仕組みを徹底させるため、首相の指示によって対処方針を作り、国会承認を義務付けることが軸となるという。
 表面的には、文民統制、国会承認という、国民や国会に理解を得やすい体裁を取り繕いつつ、平和憲法が定める「戦争放棄」「専守防衛」を事実上放棄する集団的自衛権行使容認の流れをつくる狙いがあるのは明らかだ。
 不戦を誓う憲法9条を持つ国の基本形を変え、何が何でも集団的自衛権の行使を可能にしたい安倍政権の思惑が露骨に打ち出されるようになってきた。本末転倒である。袖口の下から武力志向の危うさを帯びた鎧がちらついている。
 国の在り方としても、手続き論から見ても、明らかにおかしい。
 安倍晋三首相は米軍との連携強化をにらみ、集団的自衛権行使容認に前のめりになっている。私的諮問機関の有識者懇談会の報告書を基に、憲法解釈を変更する形で行使容認に踏み出そうとしている。
 自国が攻撃されていないにもかかわらず、密接な関係がある国が攻撃を受ければ、その国とともに戦争に加担する。それが集団的自衛権が行使された戦闘行為の姿だ。米国が戦争を起こせば、日本も参戦する仕組みが確立してしまう。
 歴代の内閣法制局はどんな政権下にあっても、「国際法上、集団的自衛権を保有しているが、行使は現行憲法の限界を超え、許されない」との解釈を維持してきた。
 だが、安倍首相は、集団的自衛権行使容認論者とされる人物を内閣法制局長官に任命した。行政府内の憲法解釈の最高責任者を政権の意に沿う人物にすげ替えて布石を打っている。
 国民は政権のきなくさい動きを冷静に見詰めている。最新の全国世論調査は、集団的自衛権をめぐり、「行使できないままでよい」が47・4%で最も多かった。
 安倍首相は10年、20年先の国の姿をどう描いているのか。国民への説明責任を果たすべきだ。