学力テスト 子に向き合う時間確保を


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 2013年度の学力テストでも県内は小中学校8教科中6教科で全国最下位となった。残念の極みだが、最下位脱出は独り教育界のみに課せられた課題ではない。

 結果に打ちのめされるあまり、いわば「宿命」のように学力向上を諦めがちな空気も県内にはある。だが、当初は1勝が遠かった甲子園の高校野球が優勝したことからも分かるように、県内小中高校生のスポーツ・文化面の活躍は目覚ましい。いずれも長年の努力の結果だ。
 学力向上も同様だろう。努力はいずれ必ず実を結ぶ。そう信じて県全体で取り組みたい。
 小学校の全教科で全国との差が初めて4ポイント台までに収まったことを挙げて、県教育庁は「改善」と評価した。学力到達度調査や授業研究会の実施などの成果と位置付けているが、疑問を拭えない。
 近年、報告や研修が著しく増えて教員の多忙化を招き、子供と向き合う時間が減ったことは多くの識者が指摘するところだ。特に中学は部活顧問の負担が重く、休みのほとんどない教員は多い。
 教材研究は想像以上に手間暇がかかる。多忙な状況のままで学力向上のための本格的な教材研究や授業の準備ができるだろうか。散発的な研究会より校務負担軽減の方が実効性が高いのではないか。
 学級規模の縮小や教員の配置増が子供への丁寧な学習指導につながるという学校現場の声には説得力がある。佐久間正夫琉球大教授が指摘する通り、教育行政に求められるのはこうした現場の声に耳を傾けることだろう。
 今回の調査結果からくむべき教訓は、テストの点数よりむしろ生活状況と学力との関係だ。
 沖縄の子供たちは全国と比べて復習の時間が長く、読書量は群を抜いて多い。子供たちは努力しているのだ。半面、家族と一緒に夕食を食べない、学校での出来事を話さないなど、家族関係の薄さが目立つ。注目すべきは「地域の大人から褒められたことがある」割合が低いことだ。「自分には良いところがある」との回答も低さが際立つ。
 保護者や周囲の大人の関心の弱さが自尊心の低さにつながり、それが学力に反映していると見るのはうがちすぎだろうか。
 教員も保護者も地域の大人も、もっと時間をかけて子供に向き合うべきだ。迂遠(うえん)なようでも、それこそが本質的な解決策ではないか。