シリア軍事介入 即時停戦へ国連の出番


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 オバマ米大統領は、シリア政府が自国内で化学兵器を使用したと「結論付けた」ことを明言した。シリアへの軍事介入にも強い決意を表明した。

 軍事介入は罪のない多数の市民を巻き込む恐れがあり、厳に慎むべきだ。対話による外交努力を尽くし、2年続く内戦の即時停戦に最大限努力するよう求めたい。
 化学兵器は国際法違反の非人道的兵器だ。オバマ大統領はアサド政権の使用を断定するが、中立的な国連調査団の結果はまだ出ていない。国連の結果を待たずに武力行使に向かう理由が理解できない。
 イラク戦争でブッシュ前米政権が理由に挙げた大量破壊兵器は見つからなかった。イラク戦争の二の舞いにならないか憂慮する。
 国連安全保障理事会の5常任理事国は、シリアに対する武力行使容認決議案を協議したが、ロシアと中国が反対し決裂した。米国は決議案採決を待たずに限定攻撃する構えだが、国連決議のない軍事介入は正当性がない。米国世論の半数近くは軍事攻撃に反対だ。
 イラク戦争も武力行使を容認する国連決議なしに有志国連合で始め、泥沼化した。
 武力行使は、対話による解決の道を完全に閉ざしてしまう。限定的であれ戦争を始めれば拡大は必至で、多数の犠牲と難民が発生する可能性が高い。
 一方、アサド政権は化学兵器使用を否定している。それなら国連調査団の調査に全面協力し、使用していない証拠を示さなければ国際社会は納得しない。化学兵器禁止条約(CWC)に加盟していない点も不信感を増幅させている。
 安倍晋三首相周辺は「アサド政権が化学兵器を使ったのは間違いないようだ」とし、米国の武力攻撃を追認する公算が大きいという。しかし真の「同盟国」であれば、国際協調を重視して問題を解決するよう説得するのが筋ではないか。
 安倍首相は化学兵器使用は「いかなる場合でも許されない」と言うが、「いかなる状況下でも」核兵器を再び使わせないと訴える「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に日本は加わらなかった。
 明らかに矛盾している。無差別殺傷能力を持つ化学兵器と核兵器の使用はいずれも決して許されないはずだからだ。過去の過ちに学び、慎重かつ冷静で粘り強く対応することこそ問題解決の近道だ。