特別警報運用開始 危険察知し早めに備えよ


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 重大災害の恐れが高まった場合に危険が迫ったことを知らせる気象庁の特別警報の運用が30日から始まった。危険性への注意をより強く喚起したいという意図の表れだろう。その工夫は評価したい。

 だが特別警報は万能ではない。予報技術には限界があり、発令が間に合わない恐れも十分にある。私たち自身、「特別警報頼み」でなく、予兆の収集に努め、早め早めの避難を心掛けたい。
 「特別警報の新設で、警報や土砂災害警戒情報など他の情報が軽視されないか」。防災関係者は一様にそうした不安を抱いている。
 なぜか。特別警報では間に合わないことが予想されるからだ。
 実際、7月と8月に2回もあった山陰地方の記録的豪雨は特別警報に相当し、気象台は「直ちに命を守る行動を」と呼び掛けたが、発表はいずれも機を逸した。
 山口県萩市では7月28日、午前11時までの1時間に100ミリ超の猛烈な雨が降ったが、特別警報相当の判断は午前11時20分だった。8月24日未明の島根県西部の豪雨は、前日深夜時点の予想は「多い所で1時間に50ミリ」だったが、実際には92・5ミリに達した。
 昨年7月の九州北部豪雨でも災害発生に間に合わなかったことが分かっている。
 局所的な大雨はさらに予測が困難だ。特別警報が出た時には既に外出が危険な状況になっていることも十分あり得る。気象庁が言う通り、「特別警報が発表されるころには安全な場所に」いる必要があるのだ。
 ただ、山陰豪雨ではいずれの場合もピークの数時間前には大雨警報が発表されており、住民が危険を察知するのは可能だった。特別警報以外の情報を軽視してはならないゆえんである。
 特別警報は「数十年に1度の現象」を基準にするが、そこまでいかない警報相当の気象でも災害の恐れはある。その点も留意したい。
 警報発表時点で自分のいる場所がどんな場所であるかも重要だ。低地で洪水の危険性があるのか。あるいは土砂崩れを恐れなければならないか。それによって取るべき行動は違うだろう。気象の推移を見て居場所の性質も勘案し、早めに適切な判断をする必要がある。
 災害を防ぐのは何より備えだ。発表がなくても「自分の身は自分で守る」心構えを持ちたい。