関東大震災90年 減災へ人知を尽くそう


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 10万5千人余りが犠牲となった関東大震災から1日で90年の節目を迎えた。震災の教訓に思いをはせ、防災および被害を最小限に抑える減災に人知を尽くしたい。

 関東大震災は昼食準備時に地震が発生したため火を使用中の家庭で火災が多発し、台風接近に伴う強風にもあおられて被害拡大が拡大した。地震直後、壊滅状態の東京や横浜で「朝鮮人が暴動を起こしている」などのうわさが広がり、軍や警察、自警団によって暴動の事実が確認されないまま多数の朝鮮人が殺される事件もあった。負の歴史も教訓化しなくてならない。
 早朝に発生した阪神大震災(1995年)は火災や耐震補強の不十分さに起因する建物倒壊など複合的要因で被害が拡大した。発生時間帯、気象条件などにより被害状況が変わる震災に、どう対応するか。人間の想像力が問われる。
 「高い確度での予知は困難」。国がこう指摘する東海沖から九州沖の南海トラフ巨大地震は、関東大震災を上回り、最悪32万3千人が死亡すると想定される。
 巨大地震に耐え得る建物や天井、照明器具などの耐震化、巨大津波に備える防潮堤や避難路などハード整備は、国や自治体の責務だ。
 災害発生後の被害を最小化する減災については、防災のノウハウを有する自治体など関係機関と住民、企業などの知恵を結集、少子高齢化の度合いなど地域事情も踏まえて実効ある対策を講じる必要がある。独自で避難が困難な高齢者や障がい者、幼児らの誘導策をきめ細かく検討、確立すべきだ。
 東日本大震災は交通網や通信・電力などが各地で分断され、人や物が移動できない非常事態に陥った。ライフラインの代替手段確保など災害に強い街づくりをハード、ソフト両面で進める必要がある。
 国は南海トラフ巨大地震が発生すれば、激しい揺れや大津波により経済的な被害額は最悪で220兆3千億円に上ると試算。国家予算の2年分を上回り、東日本大震災の約13倍に相当する。沖縄も1千億円の被害が見込まれている。
 被災地は北海道と東北6県を除く40都府県に及び、発生1週間後の避難者数は最大950万人と分析されている。2次被害や住民の孤立を防ぐ避難誘導、高台移転など具体策を策定し、実効性を高めねばならない。沖縄も例外ではない。