労働経済白書 雇用改善で好循環を生め


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 屋台骨が揺らいでいて生活が不安定-。厚生労働省の2013年版労働経済白書からは非正規雇用家庭のそんな姿が浮かぶ。

 一家の年間所得が単身世帯で200万円、2人以上で300万円を下回る「低所得世帯」で、世帯主など稼ぎ頭のうち非正規労働者の人は2010年時点で約149万2千人と推計された。
 男性は約57万人、女性は約92万人。この中には夫婦だけの世帯のほか、低所得の不安定な雇用環境の中で子育てをしている世帯も多いだろう。
 一家の大黒柱が不安定では生活も安定しない。子どもの教育への影響のほか、生活苦から「無保険」「無年金」状態になるといった悪循環に陥りかねない。社会保障制度上も重大な問題だ。
 白書は国勢調査などを基に、学生を除く15~59歳の非正規労働者は約1253万人で、このうち339万人程度が正社員になりたいと考えていると推計した。
 非正規労働者の就業意識はさまざまだ。雇用形態は多様であっていい。しかし、正社員になりたいのになれないという雇用のゆがみは何としても改善すべきだ。
 特に県内は非正規労働者の割合が高いだけに、正規雇用拡大の取り組み強化が求められる。
 白書は、職業能力向上の機会提供などで非正規労働者の支援を強化し、雇用安定や処遇改善を図ることが重要と指摘。「限定正社員」制度も有効と強調している。
 ただ「限定正社員」制度は安倍政権も普及を図る方針だが、子育てや介護などに合わせ働けるなどのメリットがある半面、正社員より賃金が安く解雇されやすいといった懸念や批判も強い。
 白書も「労働者個人の選択が確保されることが重要」とくぎを刺した。労働者の視点に立ったものでなければ「非正規」と大きく変わらない制度になりかねない。
 企業側の対応がより重要になる。全日空の件が好例だろう。バブル崩壊を受けたコスト削減策として契約社員制度を導入していた客室乗務員について、来春から全て正社員雇用に切り替える。安定的な人材確保とサービス向上を図ることが狙いだ。
 正社員化などで、労働者が意欲を持って働けて、自らの生活も向上する。そのことで企業の業績も伸び、消費者にも還元できる。景気回復の足取りも確かになる。雇用改善で好循環を生みたい。