認可外防音工事 新たな保育格差は避けよ


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 嘉手納基地や普天間飛行場など、米軍機の騒音被害を受けている基地周辺の認可外保育施設が、防音対策工事を行う際に国の補助金の対象外となっている問題で、防衛省が2014年度予算の概算要求に、認可外保育所にも助成対象を拡充する方針を盛り込んだ。

 認可施設と同様に天井や壁、窓の防音工事や空調設備の整備・維持管理費を助成する。今まで放置されていた問題の解決に向けて前進したことは評価したい。だが新たな問題も生じている。助成対象に加えるのは厚生労働省の指導監督基準を満たす認可外施設に限ったためだ。
 県内の助成対象地域(うるささ指数75以上)にある認可外97施設のうち、基準を満たすのは44カ所にとどまる。このままでは「認可外保育所内で新たな差別を生じさせるだけで、根本的な問題の解決には至らない」(山内優子沖縄大非常勤講師)ことは明らかだ。
 認可外施設に対する厚労省基準は、適正な保育環境の確保を目的に、保育従事者や有資格者数、施設面積、設備などで一定水準を満たすことを求めている。だが財政基盤が弱かったり、立地環境に問題があったりするなど、関係者は直ちに基準をクリアすることが難しい施設が多いと指摘している。
 県によると、基準を満たした施設が翌年には基準を満たせなくなる事例も毎年あるという。「防音助成の申請をしても、着工時には対象外となる可能性」(政府関係者)さえあるとなれば、なおさら問題が多いと言わざるを得ない。
 助成対象の線引きに対し、保育関係者は「必ずしも全ての園が努力して基準を達成できるものではない」と疑問を示している。
 厚労省基準の完全順守と自助努力を要件とした助成の拡充自体に無理はないか。政府の助成対象の線引きは何を意図しているのか、不可解だ。政府は関係者の訴えを真摯(しんし)に受け止め、騒音被害の実態に即して認可外への助成措置拡充を図るよう、再検討を求めたい。
 そもそもこの問題の原点には、「認可か認可外かで子どもの保育環境に差が生じてはいけない」という共通認識があったことを確認しておきたい。全ての認可外施設に等しく対策が講じられるべきだが、自治体や保育関係者らも政府側とのさらなる折衝と並行し、早急な改善に自らも乗り出せる点はないのかという視点で、知恵を出し合いたい。