消費増税集中点検 本質的議論が欠けている


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 消費税率引き上げの是非を有識者60人に聴いた政府の点検会合の結果、予定通りの増税容認が7割超に上った。増税時期の先延ばしや税率上げ幅変更などの見直し案は11人。増税反対3人だった。

 増税容認7割には社会保障の充実など条件付きの人が多く含まれ、政府内にも意見が「百家争鳴」状態との指摘がある。要件が満たされなければ態度が変わる人もいよう。点検結果を消費増税のお墨付きと判断してはならない。
 共同通信の最新の全国世論調査によると、来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針に関し「予定通り実施」の回答は22・5%にとどまった。「現行税率5%の維持」が29%超で最も多く、「引き上げ時期の先送り」「引き上げ幅の縮小」も22%超を占めた。消費増税で民意は割れている。
 国の借金が1千兆円を超える財政危機の下、一体改革と財政再建をどう両立させるか。その手だては国民や企業が負担能力に応じた納税で税制を支える一方、無駄な歳出を徹底的に減らすしかない。
 この国では若者や子育て世代が低賃金や不安定な非正規雇用の中で生活にあえいでいる。点検会合では賃金が上がらないままの増税は格差が拡大すると反対意見もあった。庶民感覚に近い指摘だろう。
 消費増税だけが財政健全化の手段ではない。高所得者への課税強化や生前贈与を促す贈与税減税など有効な方法はほかにもある。消費増税に執着するあまり、累進課税の徹底など公正・公平な税制に関する議論の機会を逃していまいか。
 歳出改革の遅れも致命的だ。民主党政権が手がけた事業仕分けは不徹底で尻すぼみになった。国民生活には大なたを振るうのに、米軍への思いやり予算を削減しない政府の対応も不可解だ。
 過去最大規模の99兆円に膨らんだ政府の14年度概算要求や、10年間で200兆円を投入する自民党の「国土強靱(きょうじん)化」が物語るように、安倍政権の関心は無駄をなくす歳出改革より大型公共事業の復活に向いている。
 他方、増税と一体とされた社会保障改革は置き去りだ。生活保護引き下げなど国民に負担を強いる話が先行し、社会保障の将来像が見えない。社会保障を維持するための増税というなら、それに見合った本質的な議論を深めるべきだ。来年4月の消費増税は、見送りも含め国民的議論をやり直すべきだ。