ドラム缶汚染 県民への脅威裏付けた


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 米軍基地は、有害物質を含む大量の化学物質を使う。その管理がずさんだと、周辺住民の健康を脅かす環境汚染が生じ、基地跡利用の大きな壁になりかねない。

 沖縄市の基地跡地のサッカー場に埋められていたドラム缶に含まれた、猛毒のダイオキシン類のほとんどの検体が、環境先進国であるドイツや米国の基準値を大幅に上回っていた。
 自然界に存在しない有害物質が異常に高い数値で検出された事実は、在沖米軍基地のずさんな化学物質管理が、県民の脅威と化していることを裏付けた。
 日本政府には、米軍基地の汚染を浄化する責任がある。浄化に全力を尽くすべきだ。同時に、米軍への国内法令適用を免除している日米地位協定の改定と、国内法の不備是正を急ぐ必要がある。
 一部のドラム缶には、枯れ葉剤の製造大手「ダウ・ケミカル」の社名が記されている。米軍が管理していたドラム缶が投棄されたことはほぼ間違いないだろう。
 環境総合研究所によると、ドイツの子どもの遊び場の環境基準に照らせば、ドラム缶22検体のうち、沖縄市の調査で最大で84倍、沖縄防衛局の調査で最大11倍の数値が出た。さらに、日本では基準値が設けられていない全石油系炭化水素(TPH)の濃度でも、全検体が米国内で浄化が義務付けられる基準値を超えた。国内基準の後進性が浮かび上がる。
 要するに、子どもがサッカー場として使うことはまかりならないという汚染である。防衛局調査の数値の低さは何なのか。汚染を過小評価する印象操作ではないか。調査の信ぴょう性に疑義がある。
 今回の異常事態は、国の発表をうのみにせず、沖縄市や市民団体が独自に研究者・機関に依頼した調査によって明らかにされた。住民の健康を守るため、粘り強く調査を進めた市の対応を評価したい。
 在日米軍の環境管理規範に日本環境管理基準(JEGS)がある。日米の基準の厳しい側を採用し、環境汚染を防ぐことをうたうが、在日米軍の内部規定で運用実態は不透明だ。罰則は不十分で、抜け道となる適用除外が数多くある。
 一方、ドイツは厳格な自国の規定を持ち、米軍とも対等に渡り合う。日本の基準は主権意識の弱さが否めず、米軍基地汚染の抑止力になり得ていない。主権国家としての気概が問われている。