浅瀬の穴放置 原状回復は当たり前だ


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 子どもたちの生命が危険にさらされる状況が放置されていた。那覇市の波の上ビーチ周辺の浅瀬に56カ所の穴が開いていた。最深6・5メートルの深さがあった。うみそらトンネル開設工事に伴う仮桟橋設置で開いた穴を埋め戻していなかった。今年7月まで1年半も放置されていたというから驚きだ。

 現場は工事着工で2004年から遊泳禁止になっていたが、波打ち際では子どもたちの遊ぶ姿や中高生の遊泳も確認されてきた。一帯の水深は平均2メートルで、干潮時は1・5メートルだ。干潮なら中高校生は足の届く深さだ。浅瀬の海中を歩いていたら突然、深さ6・5メートルの穴に足をすくわれ、パニックになって溺れてもおかしくない。大人でも同じだ。由々しき事態だった。
 穴を見つけたのは4月に現場海域の指定管理を受託した共同企業体だ。新たなビーチの開業に備えて海浜を調べた際に見つけた。管理者は危険を感じ、周辺の4小中学校に注意を促していた。適切な対応だろう。
 なぜ穴が放置されたのか。工事を発注した南部国道事務所によると、仮桟橋の柱を抜く際、通常は振動を与えながら抜くことで、管状の柱の内部の土砂が落ちて自然に穴が埋まるという。しかし現場海底は琉球石灰岩だったため、穴が埋まらなかった。
 結果的に工事完了時の原状回復が不十分だった。仮桟橋を撤去した後に潜水士を海域に入れて、穴が埋まっているのかを確認すれば、こんなことにはならなかった。
 請負業者は「工事は撤去だけだった」と述べ、潜水士の確認作業は工事費用に含めれていないとの認識だ。発注した南部国道事務所側は「台風が来れば穴は自然に埋まると考えていた。もう少し最後まで確認しておくべきだった」と答えている。無責任極まりない。原状回復の最終確認まで予算措置をするのが当然だろう。各関係者は今回の不手際をしっかり検証し、再発防止に努めるべきだ。
 現場の海浜は複合型海浜公園の家族向けビーチとスポーツ区域として今年の夏に開業予定だった。穴を埋める作業などの影響で10月上旬まで開業できず、指定管理者の収益にも影響が出ている。今回の事態の責任の所在を明確にすべきだ。県内の海浜で実施されたほかの工事で同様なことが起きていないか緊急の点検作業も必要だ。