婚外子差別違憲 個の尊厳守り法改正急げ


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 生まれながらの差別は許されない。当然の結論であり、むしろ遅すぎた。

 最高裁は、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定を違憲と判断した。政府はこの決定を重く受け止め速やかに法律を見直すべきだ。
 親が法律婚かどうかという違いで、生まれたことに何の責任もない子が不利益を負うのは「婚外子差別」と批判されてきた。しかもこの法律は19世紀末の明治時代の民法から引き継がれた差別規定だ。
 あらゆる種類の差別から守られる権利を掲げた子どもの権利条約や国際人権規約に抵触する。
 シングルマザー、事実婚など家族の在り方が多様化している。県内の婚外子は全国平均の約2倍の高さだ。日本とは逆に欧米諸国は婚外子差別撤廃に取り組んできた。国連は日本に対し再三差別撤廃の勧告を繰り返していた。
 明治の民法から戦後の民法に差別が引き継がれてしまったが、「可及的速やかに、将来において更に改正する必要がある」との付帯決議がある。この決議を半世紀も履行せず、1996年にようやく法制審議会が相続分を平等にする民法改正要綱をまとめた。
 しかし伝統的な家族観を重んじる一部国会議員の反対で、法案を提出できなかった。民主党政権下でも棚上げにされた。問題を放置してきた政治の責任は重い。
 一方、司法の側にも問題がある。最高裁は95年の大法廷決定で、婚外子の相続分を嫡出子の半分とする民法の規定を合憲としたからだ。国会の立法措置に解決を委ねる消極姿勢だ。その姿勢を転換して全員一致で違憲と判断した意義は大きいが、遅すぎたと言わざるを得ない。
 今回の判決は、解決済みの他の相続に影響を及ぼさないとしている。だが嫡出子の半分しか相続できなかった婚外子は納得できないだろう。
 相続の問題だけではない。母親が結婚の経験がない場合、税制上の「寡婦控除」は適用されず、住民税や保育料が高くなる。寡婦控除は夫と死別したか離婚した母を対象にしているからだ。法律上の不備を解消するために関連法を見直す必要がある。
 個人の尊厳を守るため、直ちに差別を撤廃するよう求める。