長寿復活県民会議 一人一人が向き合おう


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 県は沖縄の健康長寿復活に向けた全県的な取り組みを強化する。本年度中にも県内各界各層を網羅した「県民会議」を設立し、経済団体、教育関係団体、保健医療機関、市町村など50~60団体の加盟を見込む。沖縄が直面している長寿崩壊への強い危機感の表れだ。幅広い県民運動に発展させようとする県の意欲を評価したい。

 今年発表された最新の平均寿命(2010年)で沖縄県の女性が1975年の統計以来、初めて1位から3位に転落し、男性は30位まで順位を落とした。近年まで掲げていた「健康長寿県」の看板を降ろすだけでは済まない。近い将来に「不健康短命県」との新たな看板を掲げるかもしれない。深刻な状況にあることを県民は直視すべきだろう。
 2010年の人口動態調査をみると、県内の65歳未満の死亡率は27・5%、女性13・3%でともに全国ワーストだ。翌11年は東北で多くの犠牲者を出した東日本大震災があったため、女性は宮城、岩手に次いで3位だったが、男性は1位のままだ。男性は1997年から11年までの15年間で98、99年の2位を除いて13年全てが1位だ。3人に1人、4人に1人以上が65歳未満で死亡している状態が長年続いている。看過できない事態だ。
 なぜこうなったのか。10万人当たりの患者数を示す受診率の08年分をみると、沖縄は通院など入院外受診率が3984件で全国最下位だが、入院受診率は1246件で全国22位と高い。通院が少なく入院が多いのは、重症化して初めて医者のところに行く人が多いからではないかと考えるほかない。
 11年度の健康・栄養調査ではメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者と予備軍が県内の40歳以上で男性が3人に2人、女性は3人に1人に上り、40歳以上の全年代で全国平均を上回った。糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こしやすい青壮年層の健康状態の悪化が長寿崩壊を招いているのだ。
 長寿復活を実現するには県民一人一人の意識を高めるほかない。従来の行政側の呼び掛けだけでは限界だ。食生活の改善、運動の推進など健康回復のための問題意識を県民の間に広く深く浸透させる必要がある。「県民会議」の設立がその出発点になることに期待したい。そして県民一人一人が自身の問題として真剣に向き合う機会としたい。