障がい者条例案 真の共生社会へ踏み出そう


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 県が、障がい者の権利擁護を図る「障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」案をまとめた。都道府県で6番目の条例化となる。障がいを理由にした差別をなくすための施策を全国でも初めて盛り込んでいる。

 条例案は18日開会の県議会9月定例会で可決されれば、来年4月に施行される予定。策定に関わってきた障がい者団体も「障がい者の権利に正面から取り組んだ内容だ」と評価しており、関係者の労を多としたい。
 条例案は「何人も、障がいのある人に対して、差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と定めた。障がいのある人に対する社会的障壁を除去するための配慮を義務付け、虐待の禁止を明記した点なども意義深い。
 差別解消に向けて、雇用の場の拡大や教育の充実、駐車場の確保、住宅環境の整備、障がいのある人同士による相談体制の充実などの基本的施策を具体的に列挙。その上で、「県は市町村と協力し、計画的推進を図る」と主体を明確にしたことも妥当である。
 策定作業は障がい者ら市民と県が一緒になって進めてきた。障がい者団体などが2008年に設立した「条例づくりの会」が11年1月に県へ条例制定を求める3万人余の署名を提出。県が同年9月に制定に向けた県民会議を発足させ、当事者らと議論を重ねてきた。
 作業の大詰め段階で、条例の前文が県の素案から削除されたことに対し、障がい者側は「前文は条例の魂」と復活を強く要望。さらに制定後の対応も必要だとして、条例を3年ごとに見直す条項の追加も求め、その両方に県が応じた。
 県の福祉保健部と法規担当の総務部との間で議論があったようだが、最終的には「市民と一緒に作り上げていく」との姿勢で結論を導いた対応を歓迎したい。今後のモデルともなるのではないか。
 ただ課題も残る。差別を受けた人たちの窓口となる市町村の専門相談員設置は、義務付けが難しいとして明記が見送られた。県は「調整委員会」や「広域相談専門員」などの新たな制度を活用する方針だが、実効性を十分確保しなければならない。
 条例の制定は、あくまで「障害もある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり」に向けた第一歩であることも確認したい。その理念を多くの県民が共有することが、真の共生社会の実現につながる。