カネボウ白斑被害 顧客本位の原点に返れ


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 カネボウ化粧品は、美白商品の使用者に肌がまだらに白くなる白斑(はくはん)の健康被害が相次いだ問題で、第三者調査報告書を発表した。

 報告書は「遅くとも化粧品と白斑の因果関係が疑われた2012年9月時点で適切な措置を取るべきだった」と指摘。今年7月の自主回収までの約10カ月間、対策を怠ったと、事なかれ主義の企業体質を厳しく批判した。
 確認された白斑の発症者は約1万人に上る。症状がいまだに改善しない人も多く、夏場でも手袋やマフラーを巻いて肌を隠す人もいる。健康被害を無用に拡大させた責任はあまりにも重大だ。企業体質の変革をはじめ、安全性試験の在り方など抜本的な見直しが求められる。
 昨年9月に顧客を診察した医師が「化粧品が引き金となる可能性」を指摘したが、カネボウは「白斑は個人の病気」と取り合わなかった。使用者からのトラブル相談など異変を察知する機会は幾度となくありながら、ことごとく見逃した。さらに因果関係を認識後も、公表や商品回収の後れなど対応は後手後手に回った。
 報告書は「意図的な隠蔽(いんぺい)があったとまでは評価できない」と述べたが、消費者への裏切り行為にほかならず、美白効果を信じ使い続けた被害者からすると隠蔽行為そのものだ。事なかれ主義もここに極まれりとの思いを禁じ得ない。
 調査に当たった弁護士は「カネボウは消費者よりも商品を優先していた」と厳しく批判したが、消費者軽視や事なかれ主義の企業体質を生んだ背景に名門ブランドのおごりはなかったか。
 夏坂真澄社長は「自分の部門しか考えない風潮があった」と述べたが、組織が情報を共有できずに機能不全に陥っていた原因や背景をきちんと検証してもらいたい。それなくして企業再生など到底見込めないと自覚すべきだ。
 今後の対応について、カネボウは「完治するまで責任を持って対応する」との基本方針を掲げた。治療費や交通費を全額負担するほか、回復時に慰謝料も支払う。発症者の苦悩や怒り、本当に完治するのかという先行きへの不安を考えれば、当然の対応だろう。
 補償に加え、自主回収の影響で売上高は約2割減るなど信用失墜の代償は計り知れない。信用回復に向け、顧客本位の経営の原点に立ち返れるかが厳しく問われる。