消費税増税 増税論議のやり直しを


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 安倍晋三首相は来年4月に消費税を予定通り8%に引き上げる意向を固めた。

 増税による景気腰折れを防ぐため、税率上げ幅3%のうち2%分に当たる5兆円規模の経済対策を実施する方針だ。国の借金は初めて1千兆円を突破した。財源はどこにあるのだろうか。借金を重ねてばらまくのであれば、かつての自民党政権と何ら変わらない。
 増税よりも無駄な歳出を徹底して削減することが先だ。
 そもそもしっかりと増税論議をせずに消費税ありきでここまできた。消費税は低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題がある。法人税や高所得者の所得税、相続税など検討の余地はあるだろう。
 安倍首相は消費税を引き上げる根拠として、景気関連の指標が改善し、消費税増税法の付則で税率上げの条件となっている「経済状況の好転」がほぼ確認されたと判断したようだ。
 しかし、本当に「好転」したと言えるか疑問だ。大規模な補正予算という政策的な押し上げ、増税を想定した駆け込み需要などによって一時的に数字が伸びているだけではないのか。
 アベノミクスが引き起こした負の側面が数字に表れている。
 円安による電気料金やガソリン価格の上昇で、企業のコストが膨らんでいる。8月の企業物価指数は前年同月比2・4%の上昇となり、2008年11月以来、4年9カ月ぶりの高い伸びになった。上昇は5カ月連続だ。
 円安の影響で原材料価格が高騰し冷凍食品、ワインなど食料品を中心に値上がりしている。
 一方、7月の勤労者の基本給は14カ月連続で減っている。賃金が着実に上がらなければ財布のひもは緩まない。自営業などを除いたサラリーマン世帯の7月の消費支出は前年同月比1・6%減だった。
 街角の景気実感を示す8月の現状判断指数は前月比1・1ポイント低下して5カ月連続で悪化している。庶民感覚からすると景気回復を実感できないでいるのだ。
 経済再生と財政再建が道半ばの中で、消費税増税だけが独人歩きしている現状を憂慮する。4月増税以外の選択肢はまだある。首相のブレーンの一人は景気に配慮して増税の延期や税率の上げ幅を1%にする案を提案している。なお慎重な判断が必要だ。