敬老の日 「豊かな老い」を見いだそう


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 レクリエーションや清掃活動など、地域で活躍するお年寄りと触れ合うと、人生経験に裏打ちされた語り口や立ち居振る舞いから学ぶことは多い。戦中戦後の厳しい時代を生き抜いてきた方々は、地域社会を支える大きな財産だ。

 きょうは「敬老の日」。「豊かな老い」の意味をかみしめ、高齢者の知恵を生かす社会づくりを考えたい。
 総務省によると、2013年の65歳以上の高齢者は3186万人。総人口に占める割合が25・0%で、過去最高を更新した。4人に1人が高齢者である。2035年には3人に1人となる。
 長寿の指標である100歳以上の県内の高齢者は923人で、前年比で42人増えた。人口10万人当たりの数は、島根が82・46人と最多で、沖縄は65・51人で8位となり前年より三つ順位を下げた。
 健康長寿の陰りと受け止める向きもあるが、出生率が日本一という沖縄の子どもの多さが高齢者の割合を押し下げている面もある。冷静な分析が必要だろう。
 数値に一喜一憂せず、全ての世代で支え合い、“沖縄型”の「豊かな老い」を見いだす努力を続けたいものだ。高齢者と地域社会がつながる価値を見詰め直したい。
 高齢者に生きがいを感じてもらう特色ある活動が県内各地にある。
 名護市幸喜区で、老人会の女性有志が「見守り教室」を開き、夏休み期間中の平日、公民館で勉強する約15人の児童たちに寄り添った。最高齢は91歳だ。低学年の子に絵本を読み聞かせるなど、「地域の宝」である子どもたちと会話が弾んだ。
 お年寄りの居場所づくりと、子どもたちの思いやりを育む一石二鳥の温かい取り組みである。
 県内で、しまくとぅば(琉球諸語)の継承に向けた取り組みが活発化している。継承の先頭に立ち、地域の話し方教室などで奮闘するお年寄りの使命感に頭が下がる。
 政府の高齢社会対策大綱は、65歳以上の従来の高齢者をめぐり、「支えられる人」という意識を改め、「人生90年時代」をにらんだ仕組みへの転換を促している。高齢化社会の未来図に「住み慣れた地域で暮らす」を描く。その方向性は正しい。
 身近な地域に横たわる課題から克服し、地域の力で高齢者の孤立を防ぎ、意欲のある高齢者の出番を増やしていく。具体的かつ効果的な方策がもっとあるはずだ。