大雨特別警報 危険周知の実効性高めよ


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 日本列島を縦断した台風18号による大雨に備え、気象庁は16日午前5時5分、京都、滋賀、福井の3府県に初めて特別警報を出した。

 だが、発表時点で浸水被害に見舞われていた地域があった。住民への周知に時間がかかったことに加え、危険性に対する認識が薄い住民が出るなど、教訓を残した。
 災害への備えを呼び掛ける情報を素早く伝えることができるかは、命に関わる重大な問題だ。危険性を認識させる特別警報の周知に向けた課題を洗い出し、改善せねばならない。
 「とにかく命を守る行動を取ってください」。3府県への大雨特別警報が出されてから1時間後の16日午前6時すぎ、生中継された気象庁予報課長の記者会見からは切迫した空気が伝わってきた。
 会見は繰り返しニュースで流されたが、未明に発令されたこともあり、その危険性が十分に伝わらない市町村があった。
 人口約3万人の福井県小浜市は午前4時前に避難勧告を出したが、警報発表後も避難する住民は増えず、約900人だったという。
 多くの旅館で被害が出た京都の観光名所の嵐山では、特別警報が出た時点で浸水が進み「発表が遅すぎる」との声が上がっている。
 特別警報は、2011年の紀伊半島豪雨などで危機感が伝わらず、大きな被害を招いた反省から創設され、8月30日に運用が始まった。その発表基準は、雨量が「50年に1度」の値に達した地点が50カ所以上になった時など、通常の警報を大きく超える災害が対象だ。市町村から住民への伝達も義務付けられた。
 今回、特別警報が出された3府県の9月の平年雨量は200ミリ前後だが、48時間雨量が300ミリに迫っていた。気象庁は「大雨になりにくい地域で降ったため、特別警報を出した」と説明する。
 その一方、500ミリ以上の雨が降っていた三重、奈良の両県は大雨を多く経験しているため、発表されなかった。警報発表の設定値が600ミリ~1000ミリとなっているからだ。
 陸続きの隣県でも、警報発表基準に差があることを踏まえ、自治体側で住民に確実に情報を届ける工夫と、地域や住民の防災意識を高める対応がより一層求められる。
 テレビ、ラジオ以外にも携帯電話のメール、インターネットや防災無線での呼び掛けなど、あらゆる手段で防災に万全を尽くしたい。