沖縄高専10周年 人材の県内集積に努力を


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 国立沖縄工業高等専門学校(沖縄高専、名護市辺野古在)の創立10周年記念式典があった。

 最先端技術を身に着けた人材を育成し、多くの卒業生を企業の即戦力、大学への編入者として送り出した実績をまず評価したい。
 地域連携推進センターを通した出前授業など、社会貢献にも力を入れ、存在感を増している。
 一方で、県内産業界の受け皿がまだ不足気味で、県外就職者が7割を超えるなどの課題が横たわる。
 地元の名護市をはじめ地域社会、企業との連携を一層深め、「沖縄の発展に汗を流す高専」(伊東繁校長)の将来像の実現に向け、県内への人材集積を意識した取り組みを強化してもらいたい。
 沖縄高専は、中学校の卒業生が進学し、高校と大学2年間に相当する5年間の一貫教育を受ける。
 機械システム、情報通信、メディア情報、生物資源の4工学科で、実践的な技術教育がなされる。2009年にはさらに2年間学びを深める専攻科が開設された。
 沖縄高専は全国で最も後発の開校だったが、学生の技術力、発想力に磨きを掛けてきた。
 全国の高専生らが競う「パソコン甲子園」の1部門で2007年、08年に連覇し、12年には2部門でグランプリに輝いた。08年の全国ロボットコンテストでも優勝した。本土と渡り合う技術と意識の高さは誇れる成果である。
 しかし、進路を見ると課題が浮かぶ。2012年度までに本科卒業で就職した376人のうち、県外就職者284人に対し、県内は92人(24・4%)にとどまる。
 沖縄高専への求人数は多い。だが、優秀な人材を吸収できる県内企業が限られている。理系の人材難に直面する本土企業に比べ、県内企業の求人活動の遅れも課題だ。このままでは宝の持ち腐れになりかねない。
 本紙共催のシンポジウムで、沖縄高専の伊東昌章教授は、(1)就業体験学習(2)地元企業との共同研究(3)本年度に始動した定期企業説明会-の強化を挙げた。核心を突いている。
 企業の魅力を実感するインターンシップや説明会を一層充実させる。企業との共同研究への学生の参加によって県内志向を高める-など、打つ手はまだあるはずだ。
 高専産学連携協力会などの活動を活発化させ、県内企業への親近
感を高める努力を尽くしてほしい。