ジュゴン情報非公表 普天間撤去は逆転の発想で


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 米軍普天間飛行場の県内移設計画で埋め立て予定地となっている名護市辺野古海域を、特別天然記念物ジュゴンが昨年、3年ぶりに餌場として使っていたことを沖縄防衛局が確認していた。

 しかし、防衛局はこれを公表せず3月、移設によるジュゴンへの影響は小さいとして埋め立てを申請。新たな食(は)み跡を公表しなかったことについて、防衛省は「公表を目的とはしていない」と説明している。非常識にもほどがある。
 国民には憲法上、「知る権利」がある。情報公開法に照らせば国の情報は公開が原則だ。防衛省の無用な秘密体質は、民主主義の理念、公務員の憲法尊重擁護義務などに反する。猛省を求める。
 共同通信が入手した防衛省の調査報告書によると、辺野古沿岸の藻場でジュゴンが海草を食べた筋状の食み跡が昨年の4~6月に計12本確認された。辺野古周辺海域
では2009年6月以降、ジュゴン
の食み跡の確認は途絶えていた。
 この海域は絶滅危惧種のアオサンゴが生息し、ウミガメの産卵の場としても知られる。日本自然保護協会の調査では環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されている海草7種の安定的分布が確認されている。
 辺野古埋め立てに関しては、国際自然保護連合(IUCN)も過去に3度、ジュゴンの保護を勧告している。日米が勧告を事実上無視し続けていることは罪深い。
 海水温上昇に起因するサンゴ礁の白化やこれに伴う生態系のかく乱、クロマグロの乱獲に伴う漁業資源の枯渇、福島第1原発事故に伴う汚染水の海洋流出など、複合的要因によって海洋環境、生態系は大きなダメージを受けている。
 海を破壊し軍事施設を建設するという発想自体が、環境保護政策の強化を求める世界潮流に逆行している。政府当局者は、生物多様性に富んだ貴重な海を痛めつけることの罪悪を自覚すべきだ。
 森本敏元防衛相は、普天間の県内移設に軍事的合理性はないと指摘していた。法手続き上、仲井真弘多知事が今後、辺野古埋め立ての可否の判断を迫られる格好になるが、本来なら日米首脳が環境保護の世界潮流に反し、軍事的合理性も県民世論の支持もない辺野古移設を断念するのが筋だ。普天間の閉鎖・撤去で日米関係を劇的に改善する逆転の発想こそ必要だ。
英文へ→[Editorial] Defense Bureau keeps information on dugongs from the public