県機構改革 新しい沖縄を築く礎に


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 「政策実現型組織」。その言葉にこれまでの沖縄振興の在り方に対する反省と、新しい沖縄をつくり上げていく不退転の意思が込められていると受け止めたい。

 県は新しい沖縄振興計画「沖縄21世紀ビジョン」を着実に実現するため、2014年度から部局横断的な組織による政策実現の枠組みづくりをにらみ、大幅な機構改革に踏みだす。
 実現しない計画は意味がない。戦略を研ぎ澄まし、厳しい財政事情の中でも重点的に進める分野を強化し、ビジョンの実現に向けた実効性を担保してもらいたい。
 「県組織ビジョン」によると、21世紀ビジョンに沿って四つの部門を創設する。加えて、子育て支援などに取り組む子ども生活福祉部、鉄軌道導入をにらんだ交通政策などを担当する交通県土部などを発足させ、現行の1室8部制から1室9部制に改変する。
 機構改革が目指す姿には、沖縄の自立・自律に向けた意欲が見える。基本構想は「従来の組織では、沖縄の地域特性に起因する課題の解決は困難」と言い切っている。
 過去の4次にわたる沖縄振興計画は、本土との格差是正や社会資本整備に力点が置かれ、組織も高率補助を前提とした施策の執行管理に腐心してきた。中央省庁の縦割りになぞらえ、県自ら「省庁相似型・事務執行型組織だった」と強調し、戦略性を持った組織への改革が不可欠としている。
 今回の機構改革で、社会資本整備の主軸を担った土木建築部の名称が消えたことは、今後の方向性を象徴しているのではないか。
 昨年9月、県は21世紀ビジョン基本計画の実施計画を決めた。政策目標の項目ごとに5年後、10年後の目標値を盛り込んだ。「人口しか達成できていない」とやゆされた従来の沖縄振興計画を踏まえ、実現性にこだわった。
 今回の組織改編はその延長線上にある。県自らの企画力、実行力を高め、多様化する県民ニーズに応じつつ、自立型経済構築に突き進む組織として、「政策実現型組織」を掲げた。
 1室9部と部門制を制御する全体戦略会議では、仲井真弘多知事の指導力が問われる。縦割りを解消し、県民ニーズを踏まえた果敢な政策遂行には、知事自身がこだわりを見せてきたはずである。
 県庁、県議会で徹底的に論議を尽くし、新しい沖縄像を紡ぎだす土台を築いてもらいたい。