JR北海道 徹底調査でうみ出し切れ


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 あまりのずさんさに言葉もない。JR北海道のレール幅の異常を放置した例が新たに170カ所も見つかり、計267カ所に達した。異常は北海道全域に及ぶ。

 国土交通省が特別保安監査の態勢を4人から9人へ増やし、25日からは20人へ増強したが、むしろ遅いくらいだ。これを機に徹底的に調べ、うみを出し切ってもらいたい。
 JR函館線大沼駅で貨物列車が脱線したのが9月19日だ。翌々日、レール幅の基準値超えは9カ所と発表されたが、国交省の特別保安監査が始まると、レール幅だけでなく高さなどの異常の放置が97カ所に拡大した。今度はさらにそれが3倍に膨れ上がった。
 同社では前月にも脱線事故があり、出火・発煙などのトラブルも多発していた。安全軽視の体質の結果と見て間違いあるまい。
 レール幅が基準より広がれば脱線するのは理の当然だ。脱線事故は乗客の死に直結する。それを放置するのは信じがたい。
 24日までに分かった97カ所の基準超過は、列車の待機などに使う副本線が48カ所で、残り49カ所は本線だ。JR北海道の社内規定では異常が見つかれば15日以内に補修することになっているが、副本線で1年以上の放置が4カ所、本線ですら16カ所で約5カ月以上放置していた。中には特急列車が最高時速130キロで走る地点も4カ所ある。これを放置する会社に、公共交通を運営する資格はない。
 通常、線路の枕木はコンクリート製だが、同社の路線には木製もある。同社は、脱線の危険は理論上43ミリ以上としているが、木製の枕木はゆがみやすく、20ミリで脱線の恐れがあるとの指摘もある。しかも同社は最新車両に比べ3倍も重く、枕木が傷みやすいディーゼル車も走る。危険は明らかだ。
 国も責任を免れない。国は2011年に鉄道事業法に基づく事業改善命令を同社に発した。現実を見れば、安全文化を根付かせるのに失敗した、と言われても反論できまい。
 北海道は過疎地が多く、除雪にも膨大な経費がかかる。JR北海道も本業は毎年赤字だ。経営基盤が弱いから、国は分割民営化の際に経営安定基金という「手切れ金」を持たせ、その運用益で赤字を穴埋めさせてきた。そのシステムの限界が今回、露呈したのではないか。抜本的な対策を講じない限り、人の命を預かる事業はできない。