今度は緊急着陸 飛行停止し原因究明せよ


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 トラブルが絶えない米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが、米アリゾナ州の民間空港に緊急着陸した。6月と8月にも重大事故があったばかりだ。あらためて安全性を危惧せざるを得ない。

 今回は機体の詳しい状態などがまだ不明だが、米地元紙などによると、火災警報が作動したという。着陸後に操縦士はシステムの再起動を試みたが、警報器は通常状態に戻らなかった。相次ぐ重大事故の原因もまだ解明されていない中で、緊急着陸の発生は極めて遺憾だ。
 8月下旬に米西部ネバダ州で起きたオスプレイの着陸失敗事故では海兵隊は当初、「ハードランディング(激しい衝撃を伴う着地)」と説明していた。だが海軍安全センターが事故を最も損害の大きい200万ドル(約2億円)以上の「クラスA」に分類し、機体を「大破」と認定していたことなどから、事故が深刻な状況だったことが分かった。海兵隊は事故の詳しい経緯や原因を説明しておらず、現場写真の提供にも応じていない。
 6月に米南部ノースカロライナ州の射爆撃場でオスプレイが着陸時に火災を引き起こした際には、海兵隊は「機体が一部焦げた」と説明。だが実際はこれも「クラスA」で、機体は大破し、被害額6300万ドル(約62億円)と機体1機の価格を上回る損害が出ていた。
 事故の程度を過小に説明したり、情報を隠したりする意図があるのではないか。そう指摘されても仕方がないような不誠実な対応だ。
 開発段階から事故が頻発したオスプレイは昨年も4月にモロッコ、6月には米フロリダ州で墜落事故が起きた。普天間飛行場配備を前に相次いだ昨年の墜落は住民の不安を一層高め、日米両政府を巻き込んで安全性をめぐる大きな議論を呼んだ。にもかかわらず、意図的な情報操作を繰り返し、再発防止策を怠っているのではないか。
 25日には最後の追加配備1機が普天間飛行場に飛来し、計12機の追加配備が完了した。追加配備機は午後10時以降の飛行を繰り返すなど、すでに県内での訓練を激化させており、昨年配備の12機と合わせて県民の負担は「倍増」しつつある。
 負担を解消する根本的な解決策は全機の撤収以外にないが、海兵隊はまず一連の事故やトラブルの説明責任をきちんと果たし、事故原因の究明とその公表まで飛行を停止するのが筋だ。