防衛指針再改定 国是変更の国民合意はない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日米両政府が外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、有事の際などの自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)を来年末までに再改定することを合意した。北朝鮮の核・ミサイル開発に加え、中国の軍事的台頭が念頭にあり、自衛隊の役割をより拡大し、米軍との一体化を進める狙いがある。

 憲法の平和主義の下で、戦後日本が積み上げてきた安全保障政策が大きく変質しようとしている。国民的な議論が不十分なまま、国の在り方を転換させようとしていることに、危うさを禁じ得ない。
 ガイドラインはもともと冷戦時代の1978年に、ソ連の上陸侵攻を想定して策定されたものだ。冷戦後の97年には朝鮮半島有事を重視した内容に改定された。改定を受け、日本周辺地域で日本の平和と安全に重要な影響を与える「周辺事態」を想定した周辺事態法などが99年に成立している。
 今回の2プラス2共同文書は、南西諸島などでの自衛隊の態勢強化や米軍施設の共同使用進展などを盛り込んだ。このような軍事一辺倒の安全保障を国民は本当に望んでいるのだろうか。
 憲法改正に意欲を示す安倍晋三首相は防衛大綱の見直しをはじめ、「国家安全保障会議(NSC)」創設法案や、機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案の成立などに力を注いでいる。集団的自衛権の行使容認に向け、来年春以降の憲法解釈変更も目指しており、再改定はこうした動きとも連動し、この国のタカ派路線を加速させよう。
 再改定時期をめぐっては軍備拡張を続ける中国をにらみ、日本側が来年末までの見直しを求めたという。防衛協力強化へ前のめりの姿勢がうかがえるが、中国や韓国は強く警戒している。各国とも自制心を失ってはならない。首相はガイドラインが周辺諸国との摩擦や緊張をさらに高めかねないことを銘記すべきだ。財政難から日本の役割拡大に期待する米国が、中韓両国への配慮から日本側と立場の違いを見せているのは皮肉だ。
 何よりも一連の動きが憲法に基づく「戦争放棄」や「専守防衛」の国是の放棄を当然視していることは断じて容認できない。それを許す国民合意もない。国民的議論を尽くし、軍事面に依存しない安全保障の未来像を探るべきだ。