「慰安婦」資料 軍の強制示す重い証言


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 女性の人権を踏みにじる、旧日本軍によるおぞましい行為の詳細が、国立公文書館が市民団体に開示した資料で明るみになった。

 戦時中の1944年、インドネシアのジャワ島の捕虜収容所からオランダ人女性約35人を強制連行し、日本兵相手の慰安婦とした罪を裁かれた旧日本軍の将校ら9人の裁判記録などが開示された。
 日本軍は組織的行為によって、収容中の女性を選んで4カ所の慰安所に連行し、脅迫して売春させた。資料には、日本兵の性のはけ口となることを強いた将校の生々しい証言がある。
 「婦女が収容所から出発するのも自由意思によるものではなく、○○(将校名)の要請により州の役人が連れ出した」「女たちは遊女屋に入るまで、どういう仕事をするのか聞かされていなかった」
 日本軍の関与を認めた河野洋平官房長官の談話(1993年)の根拠となった資料は530枚に上る。詳細が初めて明らかになった資料は、軍の強制を裏付ける信ぴょう性、迫真性に富んでいる。
 一方、被害に遭ったジャン・オハーンさんは2008年にオーストラリアの大学でこう語った。
 「慰安婦は『日本軍性奴隷』の遠回しな表現だ。このような恐怖の中を生きた私は今でも悪夢を見る。私は売春宿で1回、結婚後も3回流産した。私の体はひどく壊れてしまっていたからだ」
 苦渋に満ちた体験談には、日本軍の罪深い所業が凝縮されている。オハーンさんらが、強制的に連行され、自由を奪われたまま、体を壊すまで日本兵の相手をさせられたとの証言を重く受け止めたい。
 日本国内では、官憲による暴行・脅迫を用いた連行の有無だけを挙げ、「強制性」がなかったと強調し、元慰安婦を傷付ける言説が繰り返し発せられている。
 だが、戦時の性暴力に厳しい国際世論は「強制性」を問題にしていない。仕事の内容を伝えず、女性を売春場所に押し込めただけで嫌悪感を呼び起こす。自分の娘が同じ境遇に追いやられたらどう思うかという市民感覚を基に、国際社会が慰安婦問題で日本へ険しい視線を送っていることを自覚せねばならない。
 河野談話が発表されてから20年。軍の強制性を補強する資料が次々と発掘されている。河野談話の修正論者で知られている安倍晋三首相は、国際社会に挑戦する見直しはしないと自ら明言すべきときだ。
英文へ→[Editorial] Testimonies prove “comfort women” recruited by force