みずほ融資問題 無責任体質の抜本改善図れ


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 みずほ銀行の暴力団融資問題で、歴代3頭取が報告を受けていたことが明らかになった。二転三転する説明に不信感が募る。

 同行が設置した第三者委員会が徹底調査で全貌(ぜんぼう)を把握し、資料も含め全容を公表してほしい。経営陣の進退に直結するのは必至だが、引責辞任だけで終わらせず、問題を生む構造を抜本的に改めてもらいたい。
 問題発覚は9月27日。グループの信販会社を通じ暴力団へ融資していたとの内容だ。当時、同行は「情報は担当役員止まり」と説明したが、1週間後には2010年当時の副頭取も把握していたと発表。それもわずか4日で一転し、歴代頭取も報告を受けていたと判明した。11年以降の取締役会や法令順守の会議で計8回も問題融資に関する資料が配布されていた。
 配布を受けた役員は合計で数十人に上る。頭取も含む以上、組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)との疑いが濃い。
 佐藤康博頭取は会見で、取締役会などで配布された資料は「かなりのボリューム」とし、「議論は無く、資料を見た記憶はない」と強調したが、疑問は次々に湧く。
 資料には「反社会的勢力への融資」と明記されていたという。それなのに「記憶がない」なら、暴力団との取引を深刻に受け止めなかったことになる。1997年の総会屋利益供与事件で前会長ら11人もの逮捕者を出したのに、体質は何も変わらないのか。
 金融庁に対して同行はなぜ、取締役会の資料すら見ずに「経営トップに報告なし」と答えたのか。数十人もが配布を受けたのに、「担当役員止まり」との説明が虚偽だと思う人は一人もいなかったのか。
 金融庁もなぜ見抜けなかったのか。検査忌避は重い処分の対象だ。今回はそれに該当する可能性もある。金融庁も再調査し、全容を明らかにすべきだ。
 同行が問題融資を把握した後、なぜ放置したのかも解せない。誰が放置を判断したのかも明らかにしてほしい。
 同行は三つの銀行が統合して発足したが、旧行意識を引きずった無責任体質が対応遅れを招いたと指摘される。その体質の抜本的改革も急務であろう。
 暴力団への融資は一銀行だけの問題でもない。証券業界は取引先が暴力団関係者かチェックするため、警察庁のデータベースに照会する仕組みを取っている。銀行業界もこうした対策を検討すべきだ。