公共施設耐震化 防災力が問われている


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 地方自治体が所有する役所や学校、病院などの公共施設のうち、震度6強程度の地震で倒壊する危険性の高い建物が3800棟近くに上ることが会計検査院の調べで分かった。耐震化率は昨年末時点で82・9%にとどまる。

 大震災が起これば、市役所などには災害本部が置かれ、学校は避難所となり、病院は人命救助の最前線となる。被災時に多くの人が集まる拠点施設の耐震化は待ったなしであり、各自治体は最優先で取り組んでもらいたい。
 東海地震など大規模な地震が予測されている地域で耐震化率が高い一方、予算不足から対応が遅れている自治体も少なくない。自治体の財政力の格差が、住民の命の格差につながることがあってはならない。
 国土交通省は2015年までに「多数の者が利用する建築物」の耐震化率を少なくとも9割にすると目標を掲げている。国は各都道府県とも連携し、自治体への働き掛けを強めると同時に、技術的な助言や情報提供なども積極的に行うべきだ。
 施設別の耐震化率は、公立の小中学校と高校が84・3%、拠点病院などの医療施設が76・1%、県庁や市役所、警察署などの庁舎が70・4%だった。
 県内は、学校が78・2%、病院が76・5%、庁舎が63・7%だった。病院こそ全国水準だが、全体的に取り組みが遅れていることは否めない。よもや「沖縄には大きな地震がない」と、危機意識が欠如している結果ではあるまい。
 1771年に先島諸島を襲った「明和の大津波」を挙げるまでもなく、沖縄でも巨大地震が起こり得ることを肝に銘じ、耐震化の取り組みを急いでもらいたい。
 一方、899の地方自治体では、災害時の業務継続計画がないことも明らかになった。検査院は「非常時の優先業務の執行に支障が出る可能性が高い」と指摘したが、自治体の職務怠慢にも近い、ゆゆしき事態だ。
 公共施設、企業を問わず、ハード整備である耐震化と、避難情報の伝達方法や早期復旧のための方法などを定める業務継続計画の作成は震災対策の両輪と言える。
 自治体は財源不足を耐震化遅れの隠れみのにしてはならない。問われているのは、避難訓練や防災教育などのソフト対策を含めた防災力であることを銘記すべきだ。