福岡医院火災 防火体制の点検・強化を


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 一体全体、防火体制はどうなっていたのか。こんな形で、入院中の高齢者ら10人が命を落としたのは何ともやりきれない。

 福岡市博多区の整形外科医院で起こった火災では、通報が遅れた上に初期消火が全くなされていなかった。計7枚あった防火扉も、全て閉じられていなかったという。あまりにもずさんだ。
 当直人数や避難誘導の在り方にも疑問が出ている。出火原因はもちろん、なぜ被害がこれほど拡大したのかを徹底的に検証し、今後の防火対策にしっかり生かす必要がある。
 死因は遺体の損傷が激しい1人を除き、多くは流入した煙を吸い込んだことによる一酸化炭素(CO)中毒の可能性が高いという。防火扉が機能しなかったことが被害拡大の大きな要因だろう。
 火元の1階の2枚の防火扉は熱を感知して自動で閉まる仕組みだったが、開いたままでセンサーが溶け落ちていたという。なぜ作動しなかったのか。ほかの防火扉も含め、原因究明が急務だ。
 火災のあった整形外科医院にはスプリンクラーが設置されていなかった。消防法上は、ベッド数20床なら6千平方メートル以上、19床以下なら3千平方メートル以上に設置義務があるが、約670平方メートルの同医院は対象外となっていた。
 しかし、被害の拡大防止に果たす初期消火の重要性を考えると、その基準が妥当とは思えない。
 消防庁は防火対策強化のため、認知症高齢者のグループホームでは全施設で、障がい者施設でも対象を拡大してスプリンクラーの設置を義務付ける方向だ。
 近年、こうした施設では大規模な火災が相次ぎ、多くの犠牲者を出している。今年2月に、5人が死亡した長崎市の認知症グループホームの火災は記憶に新しい。
 しかし、病院関係では5人以上が死亡した火災は1984年以来だ。対策強化はどうしても、大きな火災が起こってからなされがちだ。医療施設でも今回の火災を契機に、対策強化を急がなければなるまい。
 スプリンクラー設置にはメンテナンスも含め費用がかかるだろうが、命には代えられない。基準見直しを待たずに、独自に設置することも検討してはどうか。
 防火扉やスプリンクラーなどの設備面はもちろん、特に夜間の通報・避難誘導などの在り方も十分に点検し、改善を図ってほしい。