戦略特区に県応募 沖縄活性化の基盤採用を


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 政府が特定の地域やプロジェクトを対象に、規制を大胆に緩和して経済成長などを図る「国家戦略特区」をめぐり、県が三つのプロジェクトの採用を求めている。

 外国人観光客を増やすためのビザ要件の緩和や、外国人のダイビングガイドを増やすことをにらんだ潜水士試験の外国語対応への拡充など7件の規制緩和を含む。
 国家戦略特区は、安倍政権が成長戦略の柱に位置付け、国内外から投資を呼び込む狙いがある。自治体や企業から197件の応募があり、有識者の作業部会は県の提案を含め62件まで絞り込んだ。今月中にも対象地域を決める見通しだ。
 県が打ち出したのは、(1)世界水準の観光リゾート地形成(2)沖縄科学技術大学院大学(OIST)リーディングイノベーション(3)沖縄統合リゾートの導入-である。
 (1)(2)は、総合的な沖縄の活性化の基盤となる提案であり、県は具体的な効果を示し、県民の意識喚起を図ってほしい。戦略特区が大都市への一極集中に陥り、地方との経済格差拡大を招くことがないよう、政府は地方の提案も真摯(しんし)に検討し、沖縄県の(1)(2)の提案を採用してもらいたい。
 (1)が目指す世界水準のリゾート地形成は沖縄観光の望ましい将来像そのものである。年間の外国人観光客を200万人まで伸ばすため、出入国関連施設での手続き簡素化に向けた民間事業者の活用や、時間とお金にゆとりがある外国人高齢富裕層などのビザ要件緩和を盛り込んでいる。
 ビザ要件を大幅に緩和した台湾を訪れる中国人観光客が激増した先例がある。外国人観光客のダイビング人気は高まっており、外国人のガイドを養成する上でもビザ要件緩和は有効性があるだろう。
 (2)では、外国人の研究者を円滑に招へいするため、家族のビザ要件緩和や、外国人医師によるOIST関係者への医療行為を認めることも求めている。OISTの研究水準を上げるには人材確保が最優先の課題であり、その環境整備は欠かせない。
 一方、統合リゾートの提案は生煮え感が否めない。その軸をなすカジノへの県民の同意が得られていないことから、県は「制度のアイデア」としての提起にとどめた。実現要望の熱が弱い半端な提案をするより、(1)(2)に集約し、県の強い意思を示す方が得策ではなかったか。再考を求めたい。