G20声明 米国発の経済危機を避けよ


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 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が米国に財政問題解決の緊急行動を促す共同声明を採択した。米連邦債務の上限引き上げ問題を懸念したものだ。

 オバマ政権が米議会との調整にもし失敗すれば、米政府は新たな借金ができない上、米国債は元利返済が滞り債務不履行(デフォルト)に陥る。17日とされる上限引き上げ期限が迫る中、米政権と議会はリーマン・ショックの再来になりかねない米国発の世界経済危機を何としても回避すべきだ。
 野党共和党のベイナー下院議長が債務上限を6週間分だけ引き上げるよう提案している。政権側と議会は猶予期間を設けて集中論議し、デフォルト回避で米国民も納得し得る着地点を見つけてほしい。
 この問題の背景には医療保険改革法の来年1月の本格実施をめぐる政権と共和党の根深い対立がある。事実上の国民皆保険を目指す医療保険改革はオバマ政権の重要政策であり、政権側は“成功物語”として死守したいのだろう。共和党は医療保険改革を延期しなければ政権の求める暫定予算案や債務上限引き上げに応じず、政権奪還の足掛かりにしたいに違いない。
 医療保険改革の問題では共和党の分が悪い。共和党の強い26州が保険加入を義務付けた同改革法の条項が個人の自由を保障した憲法に違反するとして提訴。連邦最高裁は昨年、合憲判決を下した。合憲判決後もこれを政争の具にするなら「法の支配」に反しよう。
 医療保険改革で政府の役割を強化し平等な医療サービスを提供したい政権側と、「小さな政府」を追求し政府の過剰サービスを嫌う共和党が対立するのは宿命だ。しかし、どこが野党でも政府の機能をまひさせる奇策、世界経済を危機に陥れる愚策は慎むべきだ。米国内の党利党略に世界を巻き込むのが筋違いであると、米政権、議会指導者は肝に銘じてもらいたい。
 日本は中国に次ぎ、世界第2位の米国債の保有国だ。デフォルトが現実味を帯び、もし大量の米国債を持つ日本の銀行や証券会社などが大きな損失を被れば、安全な投資先として円に資金が流れ円高の進行も予想される。そうなれば円安をてこにデフレ脱却を目指すアベノミクスにも悪影響が及ぶ。デフォルトを何としても回避するよう、安倍晋三首相も米側に適切な対応を働き掛けるべきだろう。