新聞週間 生活者の知る権利守る


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 日本新聞協会が定める「新聞週間」がきょうから始まった。私たちが報道の使命と責任を自省・自戒し、読者に報道の機能と役割を再確認してもらう機会だ。

 今年の週間の代表標語には茨城県立石岡第一高校3年、大山萌さんの「いつの日も 真実に 向き合う記事がある」が選ばれた。「真実にはつらいことや悲しいことがたくさんあるけれど、それを記事として伝えないといけない」。標語に託した大山さんの思いをかみしめたい。
 新聞など報道機関をめぐって、いま先行きを危惧せざるを得ない事態も生じている。機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案のことだ。
 外交や防衛などに関する事項のうち、「国の安全保障に著しく支障を与える恐れがあり、特に秘匿が必要な情報」について、閣僚らが「特定秘密」に指定し、漏えいに罰則を科すという法案だ。
 政府に不都合な情報を恣意(しい)的に指定したり、国民に必要な情報を隠したりする疑念は消えない。新聞協会は「取材や報道の自由が制約されかねず、国民の知る権利が損なわれる恐れがある」と強い危機感を表明している。民主主義を否定しかねない危険な内容であり、あらためて法案に強く反対する。
 地方で新聞を発行している私たちの大事な役割についても述べたい。地域で暮らすさまざまな人々の「生活者」としての視点に立つことの重要性についてである。
 本年度新聞協会賞を受賞した琉球新報社と山陰中央新報社(本社・島根県松江市)の合同企画「環(めぐ)りの海」は、尖閣諸島と竹島をそれぞれ抱える地方紙同士の連携によって、国境地域に住む「生活者の視点」から領土や領有権問題を捉え直すことが狙いだった。
 メディアで対立が繰り返し報じられ、相手国への感情が悪化していく中、私たちは国対国という「中央の視点」ではなく、竹島や尖閣の周辺で生計を立てる漁業者をはじめとした各国の住民の声を伝えることで、問題の解決へ地域が果たすべき役割と可能性を見詰め直した。
 基地、原発、環太平洋連携協定(TPP)。中央と地方で利害が異なる問題は多々ある。中央の論理が理不尽な場合もあろう。地域の生活者の視点で問題の本質に迫り、多様な論点を提示する。地方紙の使命を自覚し、謙虚さを保ちつつ読者と共に歩んでいきたい。