県外移転訓練 撤去こそ真の負担軽減だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 滋賀県で実施されている陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練に、普天間飛行場の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ2機が参加した。国内の日米共同訓練で使用されたのは初めてだ。政府は「沖縄の負担軽減につながる第一歩」(小野寺五典防衛相)と胸を張るが、その説明に強い違和感を覚える。

 報道陣に公開された訓練は3分程度。悪天候の中、あえて実施したのは、今年に入ってもクラスAの重大事故が続くオスプレイへの懸念を払拭(ふっしょく)し、沖縄の基地負担軽減を強調する狙いがある。だが果たして負担は軽減しているのか。
 日米両政府は自衛隊が参加する共同訓練などの機会を活用し、沖縄に配備したオスプレイの本土での訓練を拡大する方針で合意しており、今回がその最初だ。25日には高知県での日米合同防災訓練でも使用する。自衛隊による導入も視野に国民の目に触れる機会を増やし、「沖縄の負担軽減」「防災」といった言葉でアレルギーを薄めようとする意図が見える。
 滋賀県の嘉田由紀子知事は「少しでも沖縄の基地負担が軽減されたなら理解できる」と語ったが、残念ながら実態は異なる。そもそも沖縄での通常訓練の一部の本土分散を検討するとの昨年9月の日米合意は、全くめどが立っていないことにも触れておきたい。
 普天間にはオスプレイが昨年10月の最初の12機に加え、今年8~9月にさらに12機配備された。本紙調査では追加配備が完了した9月の飛行回数は、昨年10月から7割も増えた。人口密集地などの飛行は最小限にするとの安全確保策もなし崩し状態で、運用が制限されるはずの午後10時以降の飛行が9月は4日間続いたこともあった。負担は「倍増」している。
 訓練に一定の理解を示すような発言をした嘉田知事は一方で「沖縄の負担は訓練の数が少し減るというレベルより、もっと根っこのところがある」とも述べている。その通りだ。
 政府は「オスプレイが沖縄にいない時間が増えれば負担軽減につながる」とするが、むしろ運用範囲が限りなく拡大し、普天間の拠点化が進んでいるように映る。「県外訓練を可能な限り増やしていく」方針であれば、必ずしも配備先は沖縄でなくてもよいはずだ。
 県民が望む真の負担軽減策は一時的な訓練移転でなく、配備の撤回であることを重ねて指摘したい。