伊豆大島土石流 甚大被害の検証を急げ


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 大型で強い台風26号は東京都の伊豆大島(大島町)に記録的大雨をもたらし、土石流とみられる大規模な土砂崩れにより、多数の犠牲者を出した。17日現在、死者は22人、安否不明者は27人に上る。

 政府、東京都、大島町は緊密に連携し、行方不明者の捜索と救出活動に総力を挙げてほしい。また、ライフラインの復旧を急いでもらいたい。
 甚大な被害に言葉を失い、胸がふさがる。犠牲者の無念、遺族の心情、被災者の苦悩はいかばかりか。同時に被害拡大を防ぐ手だては尽くされたのか、政府や関係自治体の対応や、危機管理の在り方に強い疑問を禁じ得ない。
 気象庁によると、大島町では観測史上最多の1時間に122・5ミリの猛烈な雨を観測。24時間雨量は800ミリを超え、10月の平年雨量の倍以上が降った。土石流は、住民の多くが就寝中の16日午前3時前に発生したとみられる。
 気象庁は、重大な自然災害の恐れが高まった場合に危険が迫ったことを知らせる特別警報を発表せず、大島町は住民への避難勧告や避難指示を出さなかった。
 災害時に大島町の川島理史町長と副町長はいずれも出張で不在だったほか、町が15日午後に被害を想定しながら、職員の非常配備態勢を敷いたのは16日午前2時と遅れたことも分かっている。同じ伊豆諸島の神津島村が、16日午前0時半に住民への避難勧告を出していたのとは対照的だ。
 確かに、真夜中に猛烈な風雨が吹き荒れる中での住民避難は危険を伴い、自治体の長が難しい判断を迫られることは想像に難くない。しかしながら結果責任はあまりに重大だ。町長には、自然災害への危機意識が欠如していなかったかが厳しく問われる。
 一方、気象庁は特別警報について「都道府県単位で大規模な災害が起きる恐れが高まった場合」とするが、今回のように離島などは抜け落ちてしまう。しゃくし定規の運用は直ちに改めるべきだ。
 また、今回の災害で仮に特別警報を発表したとしても、土石流発生から約1時間後の午前4時前後だったとされる。大雨警報や土砂災害警戒情報の発表など早い段階での気象庁から関係自治体への情報伝達や注意喚起の在り方は適切だったのか。
 自然災害には早め早めの備えが何より重要だ。今回の関係機関の対応に関する検証作業も急務だ。