保育基準誤適用 保育の質を守り是正を


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 認可保育園の0歳時と1歳時の受け入れ面積について、県福祉援課や那覇市が国の基準を誤って解釈し、一部の園に指導していたことが分かった。国の基準を厳格に適用すれば、1歳児クラスの定員を半数まで減らす施設も出てくるという。解消に向けて取り組むべき待機児童が逆に増加する事態は何としても避ける必要がある。

 国の保育面積の基準では、ほふく(はいはい)をする前の乳幼児は1人当たり1・65平方メートルで、ほふくしてから1歳までは3・3平方メートルと定めている。しかし県と県内市町村は0歳児を3・3平方メートル、1歳児を1・65平方メートルと逆に解釈し、施設を運営してきた。
 なぜこうしたことが起きたのか。厚生労働省が定めた保育所の設備基準が誤解を生む表記だったためだ。ほふく前の乳幼児を収容する部屋を「乳児室」と表記して1人当たり1・65平方メートルと定め、ほふく後の乳幼児の部屋を「ほふく室」と表記して1人当たり3・3平方メートルと定めた。しかしどの部屋が成長の度合いの高い乳幼児が対象なのかを明確に示していない。このため県は逆に解釈していたのだ。
 こうした誤解を生んでいることを把握した厚生労働省は2011年、都道府県などに留意事項を通知した。そこでは1・65平方メートルを「ほふくをしない子ども」、3・3平方メートルを「ほふくをする子ども」と明記し、ほふくをする子どもの方がより成長している乳幼児であることを明確に示した。厚労省は当初からこうした表記で通知すべきであり、解釈の分かれる表記は避けるべきだった。
 留意事項の通知後は県内市町村も国の基準に是正する必要があるだろう。しかし拙速に基準を満たそうとすれば、多くの児童が施設から出されることになり、混乱が起きかねない。丁寧な対応が必要だ。那覇市は2017年4月までに国の基準に合わせる段階的な対応を始めた。分園、第2園設置などで定員増を進め、国の基準に近づけながらも待機児童解消を進めるようだ。
 今年4月現在の県内待機児童数は1777人おり、東京に次いで2番目に多い。県内市町村は那覇市のように基準適用、待機児童解消の二つを両立させる取り組みを進めてほしい。そして県も子どもに不利益が及ばないよう、財政面を含め、さまざまな施策で保育施設を支援する必要がある。