デフォルト回避 危機再燃の懸念払拭せよ


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 オバマ政権と野党共和党の対立で難航していた米財政協議がようやく暫定合意に達した。

 米議会の上下両院は16日夜、連邦債務の上限を短期的に引き上げて来年2月までの借り入れを可能にし、政府機関も再開させる法案を賛成多数で可決した。債務上限引き上げ期限が17日に迫り、国内外の批判が高まっていたためだ。
 これにより米政府が国債の元利金などを返済できなくなる債務不履行(デフォルト)は土壇場で回避され、今月1日から一部閉鎖されていた政府機関も正常化した。
 暫定的な措置で危機はひとまず回避されたとはいえ、国民生活や世界経済を「人質」に取る形の政争は、米国に対する世界的な信用と信頼を大きく損ねたと言える。
 デフォルトになれば、米国債が急落し金利が急騰。株急落やドル安の進展などによる景気悪化で経済や市場は混乱し、世界的な金融危機に陥る懸念があった。オバマ大統領と米議会は超大国にあるまじき無責任体質を露呈し世界を不安に陥れたことを猛省すべきだ。
 対立の背景には、オバマ氏が看板政策に掲げる医療保険制度改革に対する共和党の反発がある。事実上の国民皆保険制度を目指す改革について、「大きな政府」につながると阻止を訴えた。
 その手段が、2014会計年度(13年10月~14年9月)の暫定予算や債務上限をめぐる駆け引きだ。下院は共和党が支配するため、両院の可決が必要な暫定予算は成立せず、一部政府機関が閉鎖に追い込まれ約80万人の連邦政府職員が一時帰休の対象となった。
 16日間にわたった政府機関の一部閉鎖による経済的な損失は240億ドル(約2兆3千億円)に上ると米格付け大手は報告している。国民不在の政争の代償の大きさにあきれるほかない。
 最も懸念されるのは、与野党の対立構図に何ら変わりはなく、危機が先送りされたにすぎないことだ。今回成立した暫定予算の期限は来年1月15日までで、2月7日に債務上限の引き上げ期限を迎える。「時間稼ぎの合意」と呼ばれるゆえんだ。
 しかしながら、財政協議が再び行き詰まり、世界が憂慮する事態が繰り返されることはあってはならない。オバマ大統領と上下両院の指導者は党利党略を慎み、指導力を発揮すべきだ。危機再燃の懸念を早急に払拭(ふっしょく)してほしい。