警戒ファクス放置 災害時連絡網の再点検を


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 台風26号による伊豆大島(東京都大島町)の土石流被害で、都から町役場にファクスで送信した土砂災害警戒情報が職員の不在で約6時間、放置されていた。せっかくの情報伝達システムが機能していなかったことが悔やまれる。

 都は台風が接近していた15日午後6時5分、大島町に早めの避難を心掛けることなどを盛り込んだ警戒情報を気象庁と共同で発表し、全市区町村に防災連絡用の送信機器で一斉にファクス送信した。土石流が発生する約9時間前のことだ。
 だが町は台風の警戒態勢について16日午前2時に職員を役場に集めることを決めていたため、幹部や担当者らは午後6時半までに順次帰宅。暴風雨のピークを午前3時ごろと予測したためだが、結果的にファクスは見過ごされた。
 ファクスに気付いたのは総務課長が登庁した16日午前0時ごろだが、情報は住民ほか警察、消防に伝えられなかった。町が住民に防災無線で注意を呼び掛けた午前3時35分には既に土石流が発生している。なぜ事前の重要情報が生かされなかったのか。
 一つはもちろん職員がいなかったことだ。町は15日午後1時すぎに防災無線で住民に注意を喚起しているが、結局避難勧告や指示は出さなかった。出張中だった町長や副町長との意思疎通や状況判断、ファクス受理後の対応など、検証すべき課題は多い。
 都の対応も大いに疑問だ。町にファクスを受け取ったかどうかを確認していない。都は「誰かがファクスを見ているという思い込みがあり、非常に危険というイメージも乏しかった」という。携帯電話の一本すらできなかったのか。
 夜間の避難で災害の被害が拡大する例もあり、確かに暴風雨の夜間に避難を呼び掛ける判断は難しい。だが少なくともそうした判断の材料になるはずの緊急連絡が、行政間の連絡ミスや責任感の欠如から遅れていいはずがない。
 今回は気象庁が特別警報を出さなかった点にも批判がある。雨が局地的で「都道府県単位での広がり」という基準から外れたためというが、そもそも離島であり、どうして柔軟に対応できなかったのか。
 台風の常襲地帯で、地滑り被害も多い沖縄にとっても人ごとではない。他山の石として関係機関の連絡態勢などを再点検し、災害への備えに万全を期してほしい。