武器輸出三原則 不戦の誓い捨て軍拡か


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 それは、第2次世界大戦後、一度も戦争をしていない「平和国家」の看板を下ろし、「死の商人」になり果てることを意味する。

 安倍晋三首相が設けた「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・北岡伸一国際大学長)がまとめた国家安全保障戦略の概要は、武器や関連技術の輸出を禁じる「武器輸出三原則等の見直し」を明記した。
 平和主義と不離一体の「国是」を簡単に変えてしまっては、国際社会の信頼を大きく損ない、国益も傷付ける。しかも、「三原則等」であるから、それ以外の「国是」を見直す可能性も否定できない。
 本来は全面禁輸だった三原則をめぐり、政府は、F35戦闘機向けの部品輸出などの例外をなし崩し的に広げてきたが、ついに見直しを宣言するまでに至った。
 安倍晋三政権の下で、戦後日本が歩んだ平和国家の基盤ががらがらと音を立てて崩れつつある。
 業績が低迷する防衛産業を手助けし、世界の武器市場を取り込む狙いを優先させた動きだ。武器輸出三原則の放棄は、米国のような「軍産複合体」が強大な影響力を持ち、軍備拡大・軍事優先の国へと変わる危険性を帯びている。
 国民への説明は尽くされず、国会でもまともな論戦は交わされていない。そうした中、首相の私的諮問機関が独走を続けている。
 三原則は1967年に佐藤内閣が打ち出し、(1)共産圏(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争の当事国-に武器輸出を認めないとした。三木内閣は対象をあらゆる国に広げ、「平和国家としてのわが国の立場から、国際紛争を助長することを回避する」と宣言した。
 太平洋戦争でおびただしい犠牲をはらった負の遺産を踏まえ、不戦を誓う平和憲法に立脚した姿勢は、国際社会から高く評価された。非核三原則と並んで「平和国家・日本」のイメージを高めてきた。
 日本が武器供与国として、戦争に加担する危うさを自覚しているのか。シリアの内戦などでは、武器供与国と非供与国が対立し、和平が大幅に遅れる間に犠牲者が拡大している。
 日本は、武器禁輸政策を持つ第三国として国際紛争を止める調停役を果たす資格を持ち得た。日本が輸出した兵器や技術が戦闘に用いられれば、平和外交を担う資格も気概も失うことに等しい。
 戦後68年。平和国家としての蓄積を打ち捨ててはならない。