広がる盗聴疑惑 凋落する大国の傲りと焦り

 米国情報機関の国家安全保障局(NSA)が外国の指導者35人の電話を盗聴していた、と英紙ガーディアンが報じた。米中央情報局(CIA)の元職員から提供された機密文書の内容だ。

 ドイツのメルケル首相への盗聴疑惑が浮上したばかりであり、それ以外の国の指導者への盗聴も十分に類推できる。フランスでは7千万件以上の通話やメールの傍受があったと報じられ、欧州連合(EU)は米国への反発と不信を募らせている。
 ドイツやフランスは米国に事情説明を求め、再発防止策を協議する意向だ。米オバマ政権はこの事態を深刻に受け止め、誠意ある説明と改善策を示す必要がある。
 米国は盗聴の目的はテロ対策と説明してきた。しかし、テロ対策に協調してきた同盟国、友好国の首脳まで盗聴の対象にするのは明らかに目的から逸脱している。
 EUは「9・11テロ」以降、国際送金や旅客機利用者の情報を共有し、テロ計画などを探知する仕組みに協力し成果を上げてきた。
 しかし今回の盗聴疑惑で、EUからは米国から十分な説明がない場合は、テロへの協力関係を見直すべきだとの声も上がっている。米国の独り善がりな盗聴活動は、テロ防止という本来の目的をも損なう罪深い錯誤と言えよう。
 盗聴疑惑はブラジルやメキシコの首脳にも及んでいる。こう見ると、一連の盗聴活動はテロ防止というより、政治や経済などの分野で情報を集め、外交上優位に立ちたいとの思惑が働いている。
 デフォルト(債務不履行)危機に見られるように、政治、経済、外交などあらゆる分野で国際社会における米国の威信は揺らいでいる。やみくもな盗聴活動には、これまでは黙っていても入ってきた情報が、威信低下に伴い集まりにくくなっているという事情もあるのではないか。凋落(ちょうらく)する大国の傲(おご)りと焦りを見る思いだ。
 「指導者35人」に日本の首相も入っている可能性が高い。米国内の日本大使館が盗聴対象になっていたことは既に明らかだ。日本政府も各国同様、厳しい態度で臨むべきだ。
 特定秘密保護法を制定し、あれこれ理由を付けて「国家の秘密」を保護しても、盗聴を許しては国益は守れない。まさか米国に限っては盗聴を認める、というわけではあるまい。ここでも従属姿勢を見せれば、日本の威信も失墜する。



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