減反見直し 農業改革の全体像を示せ


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 政府・与党は、コメの生産調整(減反)を見直す方向で検討を始めた。安倍政権の成長戦略を話し合う産業競争力会議の農業分科会が具体的な検討作業に着手した。

 コメ余りが問題となってきた1970年に始まった減反は、長らくコメ農政の柱と位置付けられてきた。零細な農家が多い日本農業を下支えしてきた減反が廃止となれば、抜本的な政策転換となり、農家やJAなどからの反発も想定される。
 農業の現場に混乱を招くことがないよう、議論の透明性を確保し、かつ慎重に検討作業を進めてもらいたい。
 減反は、作り過ぎでコメの価格が下がるのを防ぎ、農家の収入を確保する狙いがある。半面、農家のコメ作りへの意欲を低下させ、国産米が高くなる原因との批判も根強い。いわば減反は、国内保護農政の象徴と言えよう。
 現在は、政府が毎年11月、都道府県ごとに生産量の目標を決定。減反に参加すれば、作付面積10アール当たり1万5千円の補助金を一律支給する仕組みだ。減反見直し作業では、関連の補助金や交付金を縮小し、最終的に廃止することが検討されるとみられる。
 減反の見直しはこれまでも議論されてきたが、実現しなかった。2009年には当時の石破茂農相が抜本的な減反見直しを表明したが、農村部を地盤とする自民党農林族や農協などが猛反発し、断念に追い込まれた経緯がある。
 今回の減反見直しの背景には、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加がある。農業の強化が課題とされ、政府は農業の大規模化など生産拡大と効率化を進めて、競争力を高める狙いだ。
 農業改革の必要性に異論はないが、TPP参加の是非をめぐっては国論を二分したままだ。安倍政権が外圧を利用して減反見直しを推し進めようとすることは、動機が不純だと指摘せざるを得ない。
 日本はTPP交渉でコメなど重要5項目を「聖域」として関税撤廃の例外とするよう求めている。コメの保護政策から競争政策への転換は、日本が聖域にこだわらないとの誤ったメッセージを内外に与えかねない。
 そもそも国土の狭い日本で、米国やオーストラリアなど農業大国と競争できる農業の大規模化が果たして可能なのか。政府は減反見直しの前に、日本農業改革の全体像を提示すべきだ。