秘密法反対5割超 懸念受け止め成立断念を


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 国民の秘密保護法制への抵抗感がくっきりと表れた。共同通信社が26、27両日に実施した全国電話世論調査によると、政府が今国会に提出した特定秘密保護法案に反対が50・6%と半数を超えた。賛成は35・9%だった。

 9月中旬の前回調査では同法を必要と答えたのが57・7%で、34・1%が必要ないとした。1カ月余で賛否が逆転したことは、国民の間で秘密法案に対する懸念、警戒感が強まっている証左だ。法案の慎重審議を求める意見も83%を占めた。政府は民意を重く受け止め、法案成立を断念すべきだ。
 「防衛秘密」を管理する防衛省が2011年までの5年間に廃棄した秘密指定文書は計約3万4千件に上るが、指定が解除されたのは02年の防衛秘密指定制度の導入以降1件だけだ。これは防衛省が秘密指定に熱心な半面、情報公開には無関心だと自白したに等しい。
 防衛省は「法令に基づいて処理しており、問題はない」とするが、誰がそれを証明できよう。廃棄された秘密文書の中身や秘密指定の妥当性を検証するのは不可能だ。
 恣意(しい)的な制度運用が懸念される秘密法案だが、県民は既にそのような国の対応を経験している。
 海上自衛隊那覇基地の対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)の建築資料公開の是非をめぐり、最高裁が2001年7月、那覇市の公開決定を妥当とした二審判決を支持し国側の上告を棄却した。那覇市情報公開取消訴訟のことだ。
 市に提出された建築資料は防衛庁(当時)の秘密指定がなかった。判決は「公開されると防衛上重大な支障が出る」との国の主張を退け、市の公開判断を尊重した。
 1989年の市民の公開請求から判決確定まで12年を要したが、情報公開の理念を具体化した画期的判決として注目された。しかし、秘密法が成立すると、国の不当な秘密主義に風穴を開ける市民の行動は処罰対象とされかねない。
 法制化により、国民の「知る権利」とこれを支える「取材・報道の自由」が脅かされる。政府の思うがままに秘密を指定し、国民の情報へのアクセスを排除するような法案によって、この国の民主主義を劣化させてはならない。国民はこのような法の制定を安倍政権に委任してはいない。政府は秘密法案を白紙撤回し、情報公開についての国民的議論を一からやり直すべきだ。