米重鎮が困難視 辺野古計画の過ち認めよ


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 日本政府よりも米国の方がよほど沖縄の民意に敏感なようだ。残念ながらそう思わざるを得ない。

 米国務副次官補などを歴任し、在日米軍再編交渉に携わったラスト・デミング氏が、米国でのシンポジウムで普天間飛行場の問題について「現行計画が脱線した場合には何らかの軟着陸が必要になる」と述べ、名護市辺野古への移設計画の代替案を検討すべきだとの認識を示した。
 一方、クリントン政権で普天間返還の日米合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は、埼玉県でのシンポに出席し、普天間移設について「沖縄県民の意思で決まるべきものだ」と記者団に語った。
 米国務、国防両省でそれぞれ沖縄の問題を長年担当した知日派の重鎮が、移設見直しの必要性を示唆したことを重く受け止めたい。
 両者ともかつて県内移設を推進する立場にあった人物だ。今も現行計画を否定してはいないが、沖縄の世論が移設に強く反対していることを二人とも十分理解した上での発言である点が注目されよう。ただ内容に驚きはない。これまでも辺野古移設や海兵隊駐留に否定的な見解を示していたからだ。
 デミング氏は7月の本紙との会見で辺野古移設は「政治的には極めて困難」と指摘し、県外移設を日本が提案すれば米側は真剣に検討すると述べている。ナイ氏は2011年の論文で県内移設に関し「沖縄に受け入れられる余地はほとんどない」と述べ、オーストラリアへの海兵隊移転を提唱した。
 翻って日本政府はどうか。県知事が県外移設を強く求め、県議会や市町村議会が県内移設反対の決議を繰り返しても、辺野古移設の方針を変えない。知事に移設に向けた埋め立て申請の承認を求め、来年1月の名護市長選に向けてまたぞろ圧力を強めようとしている。
 一方の米国では移設に懐疑的な見方が噴出している。その根拠は県民の反対にとどまらず、財政難に伴う国防予算の削減圧力、アジア太平洋地域における軍事戦略の変化を踏まえた地上戦力削減や部隊再編など、あらゆる視点から議会や有識者間で多様な議論が展開されている。
 それでも日本政府は過ちを認めず、あくまで沖縄での移設を強行するのか。米国で対日政策を取り仕切る一握りの日本対策屋(ジャパン・ハンドラーズ)のご機嫌伺いはいい加減にやめ、移設計画の見直しにかじを切るべきだ。