天安門車両突入 弾圧やめ自決権認めよ


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 北京・天安門前への車両突入はウイグル族によるものとの公算が大きくなった。ただし、中国当局はこれをウイグル族弾圧強化の口実にしてはならない。

 「こうした行為に訴えざるを得なかったのは、権利を平和的に主張する手段が失われているから」。ウイグル族の学者はそう主張する。力による統治は失敗しているとみていい。中国当局は少数民族弾圧をやめ、対話による解決へ転じるべきだ。
 28日正午ごろ、3人が乗る車両は歩道へ突っ込んだ後、橋の欄干に衝突して炎上した。少数民族の文字を書いた旗を振りながら疾走していたとの情報もある。白昼の首都、しかも天安門だ。政治的主張を帯びていたのは間違いない。
 市民の無差別殺傷は許されないが、今回の行為がそうしたテロと断じていいかは疑問だ。一部報道によると車両は警笛を鳴らし続けていたという。事実なら市民を巻き込みたくない意思の表れであり、一種の抗議自殺であろう。
 中国当局はウイグル族ら計8人が関与したと断定した。沈静化を急ぐあまり、えん罪を招いてはならない。慎重な捜査を求めたい。
 中国は55の少数民族を抱える。だが国家統一を重視し、分離独立を回避しようとするあまり、民族の自治権を尊重するどころか、むしろ抑圧する傾向がある。近年は特に「分離独立派組織への掃討作戦」を徹底的に展開してきた。
 今年4月には新疆ウイグル自治区内のカシュガルで警察とウイグル族が「衝突」し、21人が死亡した。今回、死んだ3人の1人はこの時の死者の親族というから、抗議の意思による襲撃なのだろう。抑圧を続ければ、こうした行為はやむどころかかえって過熱する。不毛な連鎖を断ち切りたい。
 中国政府はここ十数年、ウイグルとチベットで漢族の入植を強引に進めてきた。両地域ではもはや域内ですら本来の民族が少数派になっていると聞く。それぞれイスラム教と仏教という宗教的背景もあるが、それへの弾圧もあったとされる。精神文化を破壊する行為は許されない。
 ウイグルでは核実験も繰り返され、放射能による健康被害も取り沙汰される。民族が反発するのは当然すぎるほど当然であろう。
 中国に限らず、世界のどこであれ少数民族の自決権は尊重されるべきだ。人権という人類の普遍的価値に背を向けてはならない。