嘉手納増強計画 我慢強要は人道に反する


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 米空軍嘉手納基地がMC130特殊作戦機の駐機地区に格納庫などの増設を計画している。地域住民の我慢は限界に達しており、さらなる基地増強は容認できない。

 計画では駐機場を拡張し、模擬飛行装置や道路なども新設する。MC130より小型の固定翼機を想定しているとみられ、近い将来CV22オスプレイに交代する可能性も高いという。
 空軍仕様のCV22は特殊部隊用の作戦機だが、基本構造は輸送用の海兵隊MV22オスプレイとほぼ同じだ。配備先について米太平洋空軍司令官は、嘉手納や横田基地(東京都)が候補地と明言しているが、本当に嘉手納配備を計画しているのなら言語道断だ。
 普天間飛行場には8~9月の追加配備を経て計24機のオスプレイが駐機している。各地に運用を拡大させ、県民の負担感は増すばかりだ。一方ではこの夏も米国本土で着陸に失敗し、機体が炎上する重大事故が相次ぐなど、安全性に対する不安は消えることがない。
 日本政府は「米側から聞いていない」として嘉手納配備を否定しているが、普天間へのオスプレイ配備計画を直前まで否定し続けた経緯もあるだけに、その説明は信用できない。世論が配備撤回を強く求めている中、新たな計画は論外だ。
 今回の増設計画は嘉手納基地の文化財担当者が嘉手納町教育委員会に送った文書で発覚した。町への正式な連絡はなく、日本政府も知らないと説明しているという。
 防衛省によると、基地内の新たな施設建設などで周辺地域に影響が及ぶ場合、米軍が日本側に通報することになっているというが、結局は米軍の裁量に委ねられていることを今回の事例は示している。
 米軍の基地管理権を定めた日米地位協定の見直しをあらためて求めたい。ただ米側に管理権がある現状でも、重要な施設変更に対して日本政府から米側にただしていくのが主権国家として当然の姿だ。
 計画がある地区は民間地域から400メートル程度しか離れていない。1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に基づく一連の騒音軽減措置をはじめ、両政府が繰り返す沖縄の負担軽減にも逆行するものだ。
 新たなオスプレイ配備につながりかねない施設増強は到底容認できない。周辺住民にこれ以上の負担を強いることは非人道的であり、民主国家として許されない。