航空機整備拠点 アジアの成長取り込もう


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 県は、那覇空港内に民間航空機の整備拠点施設を建設する方針を固めた。空港敷地が狭いため、航空自衛隊の一部用地の活用を見込んでおり、防衛、国土交通の両省と調整を進めている。目標とする2015年度中の運用開始に向け事業の円滑な進展を期待したい。

 アジア市場を視野に入れた航空機整備基地構想は、沖縄における国際物流拠点づくりを大きく後押ししよう。
 全日本空輸(ANA)の国際貨物拠点機能を補完・強化すると同時に、格安航空会社(LCC)などの新規路線誘致といった相乗効果も見込まれるためだ。関連産業の集積による雇用創出など地域経済への波及効果も期待される。整備拠点の意義は計り知れない。
 県の構想の背景には急伸するアジアの航空需要があり、同様に整備市場も拡大していることがある。米航空コンサルタントによると、2011年の世界市場は469億米ドル(4・6兆円)だったが、23年には760億ドル(7・5兆円)を超えると見込まれ、アジアが約3割を占めると予測される。この成長市場を沖縄の地理的優位性を生かして取り込む狙いがある。
 航空機の整備業務には、日常的に点検・修理する「運航整備」や、エンジンの分解点検などの「重整備」がある。県構想は県内での運航整備全般に加え、LCC機材に多い200席以下の小型ジェット機などの重整備を想定する。
 LCCのピーチ・アビエーションは、那覇空港を関空に次ぐ第2の拠点とする方針で東南アジア路線の拡充を目指している。一方、開発が進められる国産初の小型ジェット機「MRJ」は、アジアでの受注拡大を見込んでいる。こうした需要も踏まえると、沖縄での整備拠点構想は夢物語ではない。
 もちろん課題もある。整備業務は労働集約型のため、費用に占める人件費のウエートが高い点だ。中国など近隣諸国との受注競争をどう勝ち抜くか。コスト面に加え、品質や納期厳守など高付加価値のサービス提供が不可欠となろう。
 県によると、拠点施設の敷地面積は約4万平方メートル、施設面積は2万平方メートルを想定。建設費用は100億円規模を見込む。施設運営を担う入居事業者を公募する。現時点でANAと日本トランスオーシャン航空が施設運営に強い意欲を示すが、県には公正で透明性の高い選定作業が求められる。